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- 2023/07下旬 初稿公開
近年の日本の景気回復局面は,
実感なき景気回復ばかり
近年の日本においては,
「実感なき景気回復」がよく見られるようになりました。
すなわち,政府が
「現在は景気回復局面だ」
と主張しているのに,国民は
「景気回復の実感はない」
と不満を言う,という現象が増えました。
これは,政府が根拠もなく「景気回復局面だ」と
言い張っているわけではありません。🛎️
…多分。
また,国民の方が,
暮らしが十分に楽になっているにもかかわらず
「もっと楽になりたい,ぜいたくしたい」と
駄々をこねているわけでもありません。
ここでは,奇妙に見えるこの現象の正体について,
1つの仮説を示します。
結論を先に知りたい方へ
この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。
この記事で主張すること
- 各世帯の所得よりも
各世帯の貯蓄残高に注目したい。 - 実感なき景気回復とは,
各世帯の所得水準は維持されているものの,
貯蓄残高の低空飛行を強いられる世帯が多い状態と考えられる。 - 各世帯の貯蓄残高を上げるには,
各世帯の所得を上げればよいという
単純な話ではない。
それでは,本論に入ります。
所得の格差拡大も意識しておくべきではある
筆者の仮説を述べる前に,
よく言われる意見に触れたいと思います。
実感なき景気回復が発生する理由について,
一部の富裕層の所得が増えたことで
GDPが押し上げられただけであり,
非富裕層の所得は増えていないから
とする意見です。
その意見には,筆者も異論はありません。
真偽のほどは分かりませんが,
仮説として大いに意識するべきことです。
政府としては,
富裕層を金銭的に保護する必要はないけれども,
非富裕層を手厚く保護することで,
経済的に安心して暮らせる国を作りたいと
考えるのが普通でしょう。
富裕層と非富裕層は分けて考えるべきものです。
にもかかわらず,GDPのような,
富裕層も非富裕層もまとめて合計した値の増減を見て,
一体何が分かると言うのでしょう。
せめて,非富裕層(特に貧困層)の所得が増えたことを
確認してから喜ぶべきです。
所得より注目したいのは貯蓄残高
ただ,筆者が注目したいのは,
各世帯の所得ではなく 貯蓄残高 です。
日本の非富裕層に含まれる世帯においては,
所得の減少よりも貯蓄残高の減少の方が
激しいのではないかと考えているからです。
当ブログの別の記事「異様なまでにフローを重視し~」で
出した例ですが,次のような2つの世帯を
思い浮かべてみてください。
- 世帯A:収入源は世帯主のみ,年収400万円,
現在の貯金額500万円,借金なし - 世帯B:収入源は世帯主のみ,年収400万円,
現在の貯金額30万円,借金なし
家族構成などの諸条件も同じであるとすれば,
この2つの世帯の違いは貯金額だけですが,
BよりはAの方が,
生活に余裕があると感じるであろうことは
疑いの余地がありません。
筆者は,日本の非富裕層において,
Aのような,貯蓄残高に比較的余裕がある世帯が減り,
Bのような,貯蓄残高の低空飛空を強いられる世帯が
大幅に増えた
のではないかと考えています。🛎️ 世帯だけでなく企業も同様。
以下で「貯蓄残高が少ない」のような表現を使った場合,
債務超過で借金に苦しんでいるケースも含むものとします。
実感なき景気回復の正体
このような経済情勢であるとすると,
少しばかりGDPが増えたことを根拠に日本政府が
「景気は緩やかに回復している」と宣ったとしても,
国民の側に実感が無いのは当然です。
実際に非富裕層の所得が減っていない,
あるいは微増しているとしても,
貯蓄残高の低空飛行を強いられている世帯が多すぎるので,
景気回復の実感を得るにはほど遠いのです。
筆者は,これが「実感なき景気回復」の正体ではないかと
考えています。
実感なき景気回復は,大体次のような空気感を
持っていると考えてよいでしょう。
実感なき景気回復の空気感
- 国民の消費意欲はそれなりで,
その消費意欲が企業の売り上げを増やしている。 - 多くの中小企業の貯蓄残高は低く,
経営に余裕はない。
しかし,なぜか国民の消費がまずまずなので,
何とか経営が成り立っている。
雇用も維持できるので,社会全体の失業率は低い。
とはいえ,経営に余裕はないので,
景気回復局面と言われてもピンと来ない。 - 多くの一般家庭の貯蓄残高は低く,
生活に余裕はない。
しかし,なぜか雇用情勢がまずまずなので,
収入は確保されていて人並みの暮らしができている。
とはいえ,家計に余裕はないので,
景気回復局面と言われてもピンと来ない。
企業側は,理由は分かりませんが
家庭側の消費意欲が比較的高いので,
それを理由に採用意欲を維持しています。
家庭側は,理由は分かりませんが
企業側の採用意欲が比較的高いので,
それを理由に消費意欲を維持しています。
このように,根拠はどうあれ
人々が景気を悲観していなければ,
各家庭・各企業の貯蓄残高が十分でなくとも,
ある程度の所得が確保され,
何となく景気は維持されます。
しかし,貯蓄残高に余裕がない家庭や企業ばかりですから,
景気回復局面と言われてもピンと来ないのは当然です。
しかも,このタイプの景気回復局面は,
維持するのも困難です。
このような環境下では,わずかなマイナス要素でも,
景気に対する悲観論が容易に噴出します。
言わば,一触即発の景気回復局面です。
多くの家庭や企業の貯蓄残高が上昇しない限り,
景気回復は実感なき景気回復,
すなわち一触即発型の景気回復にしかならないのです。
各家庭・各企業の所得を増やせば
貯蓄残高も増えるわけではない
実感ある景気回復を実現するには,
各家庭および各企業の貯蓄残高を
上昇させる必要があります。
しかしそれは,
各家庭・各企業の所得を増やせば良い
という単純な話ではありません。
所得を増やすこと自体も簡単ではないでしょうが,
それ以前に,前述の主張は,
原理的に筋が通っていません。
国内の経済取引のみを念頭に置いて考えると,
誰かの所得は,国内の他の誰かにとっての
支出でもあります。
ある人が所得を増やすことで貯蓄残高を増やした場合,
他の誰かが支出を増やすことで貯蓄残高を減らしています。
つまり,次のことが言えます。
各家庭・各企業の所得が増えれば,
その増加分と同じ額だけ
各家庭・各企業の支出も増えるので,
貯蓄残高の合計は変わらない。
それを忘れて,
各家庭・各企業の所得が増えれば,
各家庭・各企業の貯蓄残高も増える
と思い込んでいたら,何も前に進みません。
各家庭・各企業の貯蓄残高を増やすには
各家庭・各企業の所得が増えても,
各家庭・各企業の貯蓄残高が増えるわけではない,
と述べました。
それでは,各家庭・各企業の貯蓄残高を
増やすにはどうしたらよいのでしょうか。
その問題に対し,筆者は独自の答えを持っていますが,
それを説明するのは
姉妹サイト<世界経済蘇生秘鑰>に譲ります。
気になる方は,ぜひ足を運んでみてください。
- お急ぎの方は,理論の中核部分を解説した 概説ページ がおすすめです。🛎️
短い文書ではありませんが,極めて平易です。
標準的な高校生くらいの知識と読解力でも
すんなり大筋を理解できると思います。
まとめ
改めて,この記事の主張を以下に示します。
この記事で主張したこと
- 各世帯の所得よりも
各世帯の貯蓄残高に注目したい。 - 実感なき景気回復とは,
各世帯の所得水準は維持されているものの,
貯蓄残高の低空飛行を強いられる世帯が多い状態と考えられる。 - 各世帯の貯蓄残高を上げるには,
各世帯の所得を上げればよいという
単純な話ではない。
読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。