「持続的な経済成長」なんて無理だし,目指すべきことでもない

2023/07/21

📂経済学の違和感 GDP ゼロ成長 違和感Lv.5 持続的な経済成長 質的な生活向上 足るを知る 貧困問題

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  • 2023/07下旬 初稿公開

根強く残る「持続的な経済成長」の主張

今後の日本について,「持続的な経済成長」を
目指すべきだと主張する声は根強いです。

これは,高度成長期のような成長率は無理でも,
今後もそれなりのペースで着実に
GDPを拡大していくという考え方です。

そこで目指す成長率は,主張する人によりますが,
2%ないし3%程度の年率が想定されることが多いようです。

成熟経済になってから何十年もった日本において,
それは可能なのか,その必要はあるのか。

この記事では,その論点を整理します。

結論を先に知りたい方へ

この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。

この記事で主張すること
  • 人は無限に豊かになれるわけではない。
  • 日本のような成熟経済において
    持続的な経済成長を望む人は,
    累乗の怖さ を甘く見ているとしか思えない。
  • 日本のような成熟経済においても,
    今より質的に豊かになることは可能だが,
    量的に豊かになろうとすべきではない
  • 今後の日本においては,
    経済成長は難しい上に必要ない
  • 経済学も,足るを知る必要がある

それでは,本論に入ります。

累乗の怖さ

年率2~3%程度の緩やかな経済成長。

それくらいの成長率なら永続的に実現可能だと,
また実現すべきだと考えている人が
相当数いらっしゃることに驚きを禁じえません。

仮に,年間3%の経済成長率を50年間維持したら,
50年後の経済規模は現在の約4.38倍です。🛎️ 1.03の50乗。

日本国民の一人ひとりが,
現在の4倍以上の物やサービスを
消費できるようになるという計算になりますね。

そんなわけがありません。
日本経済に成長余地はそんなにないはずです。

50年後はまだありうるとしても,
100年後,200年後はどうなるでしょう?

毎年2~3%の安定成長などと主張している人は,
累乗の怖さ を甘く見ているとしか思えません。

「足るを知る」を是とする経済学が必要

それに,人は無限に豊かになれるわけではありません

そんな経済を実現したら,人はあっという間に
地球の資源を使い尽くしてしまうでしょう。

これからの日本は,限りある資源を,
社会全体で節約していかなければならないくらいです。

にもかかわらず,今後も人間は年間2%ないし3%程度
消費量を増やし続けるのが望ましいとは,
ひどい矛盾だと思います。

「足るを知る」という言葉があります。

従来の経済学では否定されてきた美徳ですが,
日本のような成熟経済では,
それを是とする経済学が求められているように思います。

生活水準の量的な向上はそろそろ限界

人は無限に豊かになれるわけではないと述べましたが,
質的に豊かになることは,まだまだ可能でしょう。

例えば,20世紀のパソコンと21世紀のパソコン。
20世紀の固定電話と21世紀の携帯電話。
20世紀の電話回線と21世紀のインターネット回線。

どちらが便利かは,論じるまでもありません。

値段は似たようなものでも,
利便性は今と昔で雲泥の差です。

これはすなわち,

経済規模はそのままでも,
人はより豊かになれる可能性を秘めている

ということです。

ここではIT・通信関連の例ばかり挙げましたが,
このような例は他分野でもたくさんあるでしょう。

人はまだまだ,質的に豊かになる余地は残されています。
その方向でより豊かな生活を追求するのは
問題ないと思います。

ただ,日本を含む成熟経済に関して言えば,
量的に豊かになることについては,
そろそろ限界が近づいているのではないでしょうか。

世界経済を持続可能なものにするには,
まず日本のような成熟経済が,
量的にはゼロ成長を受け入れられることが
最低限の条件になるでしょう。

従って,ゼロ成長を受け入れられない経済学は,
成熟経済に適用してはいけないと思います。

貧困問題はゼロ成長でも解決可能

こんなことを言うと,

ゼロ成長でどうやって貧困問題に対処するのか

といった声が聞こえてきそうですが,
筆者に言わせれば,そこは特に問題ありません。

GDPが増えなくても,
あるいは少しくらい減ったとしても,
非富裕層の暮らし向きを大きく改善することは
可能だと考えています。

と言うより,次の記事で述べた通り,
日本の貧困問題はGDP成長率とは
ほとんど関係がないと思っていますので。

参考記事:
日本の貧困問題は,日本の経済規模が
足りないことが原因なのか

そして,それが正しいとするなら,
省資源・環境配慮型の経済を目指して
社会全体で協力していくことも可能であるはずです。

そう考える根拠および貧困問題の解決指針については,
姉妹サイト<世界経済蘇生秘鑰>で説明していますので,
気になる方はぜひご覧ください。

  • お急ぎの方は,理論の中核部分を解説した 概説ページ がおすすめです。🛎️ 短い文書ではありませんが,極めて平易です。
    標準的な高校生くらいの知識と読解力でも
    すんなり大筋を理解できると思います。

まとめ

改めて,この記事の主張を以下に示します。

この記事で主張したこと
  • 人は無限に豊かになれるわけではない。
  • 日本のような成熟経済において
    持続的な経済成長を望む人は,
    累乗の怖さ を甘く見ているとしか思えない。
  • 日本のような成熟経済においても,
    今より質的に豊かになることは可能だと思われるが,
    量的に豊かになろうとすべきではない
  • 今後の日本においては,
    経済成長は難しい上に必要ない
  • 経済学も,足るを知る必要がある

読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。

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筆者について


「累積黒字の考え方」と題する
経済学試論の創始者。
並びに,上記試論を紹介するサイト
世界経済蘇生秘鑰>の創設者。

既存の経済学に
非常に詳しいわけではなく,
大学教養課程レベルの
マクロ・ミクロ経済学を
ひと通り学んだ程度と自己評価。

しかし,従来の経済学に
どっぷり浸かっていなかったからこそ,
従来の経済学と全く視点の異なる
上記試論が出てきたのではないかと
思っている。

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