民主主義より大事なこと

2023/07/21

📂政治 最高権力者 在任期間 独裁政権 任期

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  • 記事の状態: 有効(2024/08下旬時点)
  • 所属カテゴリー: 【政治】
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    確信度: ★★★
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  • 2023/07下旬 初稿公開 🛎️ ウクライナ戦争の真っただ中。

独裁政治を防ぐには民主主義か

2022年 2 月に始まった,
ロシアによるウクライナへの全面侵攻は,
独裁者の怖さをまざまざと見せつけました。

また,武力を使ってでも台湾を併合しようとする
中国の怖さを指摘する声も強まっています。

ロシアや中国のような
独裁政権を生み出さないためには,
やはり民主主義でなければならない,
のような意見も多数見聞きしました。

ただ,筆者は,
独裁政権を生み出さないという観点で考えるなら,
民主主義より大事な要素があるのではないかと思うのです。

この記事では,この点について考えます。

結論を先に知りたい方へ

この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。

この記事で主張すること
  • 独裁政権は,素晴らしい政治が
    長く続く可能性もあるが,
    誰も止められない暴君を生み出す危険性もあり,
    振れ幅とリスクが大きい体制であると言えそう。
  • 独裁政権の発生を避けるには,民主制度よりも,
    最高権力者でいられる期間を
    有限にすることの方が効果的だと思う。
  • 国のトップでいられる期間が限られていれば,
    悪事を重ねてでも独裁体制を築こうという気に
    なりにくいはず。🛎️ 任期が終われば,
    警察への影響力などを失って
    逮捕されるおそれもある。
  • 中国の習近平国家主席は,
    本来2期までと定めていた最高法規を
    改定してまで3期目に突入した。
    かなりの 危険信号 に見える。

それでは,本論に入ります。

独裁政治は,振れ幅とリスクが大きい体制

筆者はもともと,独裁政治が悪とは限らないと
思っていました。

素晴らしい政治家がいるなら,
その人が長く国を治めればよいではないかと。

権力争いに気を取られず
政治そのものに注力できれば,
より良い政治ができるのではないかと。

その考え自体は,筆者は今でも否定していません。

しかし,あらゆる国において全ての時期に
素晴らしい政治家がいるとは限りません。

いたとしても,民衆の支持を集めて
権力者になれるかどうかは分かりません。

どうしても,聖人を蹴落として実権を握り,
私腹を肥やしつつ国を思うがままに操ろうと企む悪人が
国の最高権力者になってしまうケースは出てくるでしょう。

あるいは,最高権力者になった当初は
まともだったけれども,
徐々に変容して権力に酔っていくケースも
あると思います。🛎️ ロシアのプーチンは
このケースかもしれません。

そのような愚者による治世が長く続くのは,
国にとって悪夢であるだけでなく,
周辺国に害を及ぼすこともあります。🛎️ ロシアによるウクライナ侵略が
まさにそれです。

つまり,独裁政治は,
長期に渡る善政が実現する可能性もあれば,
暴政圧政が長く続く危険性もあり,
振れ幅が大きくなりやすい制度と言えそうです。

一長一短ではありますが,
これは短所の方がはるかに大きいと言うべきでしょう。

従って,現在の筆者は,
結論としては多くの人と同じく,
やはり独裁政治は避けるのが無難だと考えています。

独裁政治は本質的に駄目という意見も

独裁政治は,必ず腐敗するとの意見もあるようです。

独裁者が怖れられすぎたり,
周囲の者が悪事を企んだりして,
正確な情報が報告されなくなるから,
という理由だったかと思います。

これだと,独裁者がどれだけ聖人でも,
正しい判断を下しようがないというわけですね。

この説明を見て,一理あるかもと
思った記憶があります。

いずれにしても,
独裁政治は避けるのが賢明という結論に
変わりはありません。

民主制度で独裁政治を防げるとは限らない

それでは,独裁政治を防ぐためには
どうすればよいでしょうか。

多くの人は,その答えを,
民主主義や民主制度に求めるようですね。

筆者はその意見に反対ではありませんが,
独裁政治を防ぐ効果については懐疑的です。

というのも,ロシアは一応大統領を選挙で選んでおり,
民主制度らしきものは確かに存在するのですが,
プーチンの暴走を止められていないからです。

大事なのは,最高権力者でいられる期間に
上限があること

アメリカの大統領は,任期4年で3選禁止ですよね。

つまり,アメリカの大統領でいられる期間は,
最大で8年ということです。

どんなに優れた大統領でも,8年しか務められない。

これはかなりの損失であるように見えますし,
実際,損失になることもあるのでしょう。

ただ,筆者は,この有期性こそが,
独裁政権の誕生を防ぐ鍵 なのではないかと
思うようになりました。

最高権力者でいられる期間が限られていて,
絶対に動かせないのであれば,
単純に,独裁政権を確立し,強権的な政治や
私欲にまみれた政治を行おうという気になりにくい
思うからです。

せっかく独裁政権を確立しても,
その権力が一定期間後に失われてしまうなら,
権力欲はかなりしぼのではないでしょうか。

それに,選挙管理団体や警察を掌握するなど,
強引または汚い手法で権力を拡大させた場合,
権力を失った後に訴追,投獄されかねません。🛎️ もちろん,退任者に
過度の免責特権が付与されていないことが
前提になりますが。

従って,最高権力者の有期性は,
在任中の悪事を抑制する効果もあると思います。🛎️ 定年制でもよいと思います。

よく言われているように,
アメリカのバイデン大統領は
最近言動が怪しいですし…

各国の事例

ロシア大統領の任期制限

最高権力者でいられる期間が
「終身」になりうる国は危ないです。

例えば,ロシア大統領には
「連続2期まで」との制限がありましたが,
機能していませんでした。

現大統領のプーチンは,2000年に初めて大統領になり,
連続2期務めた後,メドベージェフに1期だけ
大統領をさせました。🛎️ ここまでは1期4年,
以降は1期6年。

その間もプーチンは実権を握っていたそうです。

その後プーチンは大統領に返り咲いて,
記事執筆時点の2023年 7 月現在,
2期目の終盤です。

つまりプーチンは,もう20年以上も
実権を握り続けていることになります。

さて,プーチンは,さらなる延命を図るなら,
もう一度別の人に大統領をさせればよいはずですが,
違う一手を繰り出してきました。

2020年 1 月頃,プーチンは,
大統領の任期制限を「連続2期まで」ではなく
「通算2期まで」とすべきだと言い出します。

一見すると,任期制限を強くするような話です。

おや,それなら既に4期務めたプーチンは
引退する気かと思いますよね。

しかし,そうはなりません。

「通算2期まで」を盛り込んで憲法が改定される際,
任期のカウントは改定時点からになるそうですから。🛎️ 2021年 4 月に成立済み。

つまり,プーチンもまた
「通算0期」からのスタートになるので,
2024年の大統領選に出馬可能になるのです。

やりたい放題ですね。
開いた口が塞がりません。

独裁者プーチンは出馬すれば当選しますから,
2036年まで大統領でいられることになりましたが,
この「2036年」にも,何の意味もありません。

大統領任期に関するものであろうとなかろうと,
何らかの憲法改正を行えば,
大統領任期のカウントも,
どうせまたリセットされるのでしょうから。

というわけで,プーチンは,本人が望めば,
死ぬまで大統領でいることも可能です。

権力者でなくなったら,在任時の悪事で
訴追されるおそれがあると前述しましたが,
一生退任しないのであれば,
それを恐れる必要もありません。🛎️ プーチンは,退任後の免責特権に関する
法整備も万全にしているそうですが,
それは次以降の大統領に覆される可能性が
絶対ないとは言い切れないでしょう。

こういう事があるから,
死ぬまで国家の最高権力者でいられる
可能性のある国は危ない のです。

同じ意味で中国も危ない

同じ意味で,中国も危ない です。

2018年 3 月,中国共産党は,
最大2期までとなっていた国家主席の任期制限を
撤廃しました。

そして実際に,習近平国家主席は
前人未到の3期目に突入しています。

このことは,もっと危険視されるべきだと思います。

3期目がどうというより,
死ぬまで中国の最高権力者でいられる道が
開かれてしまったからです。

あれだけの人口と土地を持ち,
科学技術もかなり発達した国で,
より政権が暴走しやすい下地ができてしまったのです。

しかも,攻撃的な外交を展開し,
台湾の武力併合を排除しないと
明言してしまうような国です。

習近平氏が実際に暴走するかはまだ確定していませんが,
これはもう,危険な徴候どころではないと思います。🛎️ 筆者は,中国の台湾に対する武力侵攻は
避けられないのではないかと,
半ば諦めつつあります。

トルコもちょっと怪しい

ロシアや中国と比べるほどではありませんが,
トルコも少々危なっかしいと思います。

現職のエルドアン大統領は,
2023年 5 月に3期目の当選を果たしましたが,
トルコの大統領の任期は,2期10年までです。

憲法違反のはずですが,ロシアと似たような理屈で
同氏の当選回数がリセットされたらしいです。

筆者は詳しいことは分かっていませんが,
同氏が憲法の解釈や運用をじ曲げて
権力を維持したように見えます。

同氏は大統領になる前から実権を握っており,
エルドアン時代はもう20年ほど続いているとされています。

また,強権的手法がしばしば懸念や批判の
対象になってきた大統領でもあります。

同氏は今のところ,
領土欲を前面に出すようなタイプではないため,
決定的な大問題にはなっていませんが,
要注意な国ではあると思います。

ウクライナにも一応注意したい

ウクライナのゼレンスキー大統領は,
戦時下の大統領として素晴らしいと思います。

平時の内政はお世辞にも
うまくいっていたとは言えないようですが,
戦時に強い大統領でした。

同大統領の全ての言動に賛同するわけではありませんが,
2022年 2 月に始まったウクライナ全面侵攻のタイミングで
この人が大統領だったことは,
ウクライナ国民にとって最大の
「不幸中の幸い」だったと思います。

さて,こちらのゼレンスキー大統領ですが,
2024年に任期が切れます。

通常ならそこで大統領選が行われるはずですが,
戦争を理由に延期し,
同氏がそのまま続投する可能性があるようです。🛎️ 2024年 8 月下旬追記:
実際にそうなりました。

それ自体は妥当だと思いますが,
同大統領が,現在の高支持率と非常事態に乗じて
独裁体制や長期政権を築こうとする可能性は,
一応頭に入れておくべきでしょう。

特に,憲法改正などにより
3選禁止の規定を回避しようとするなら
要警戒です。

最高権力の有期性は安全性の指標になる

最高権力者の在任期間に上限がない国は
全て危ないというわけではありません。

例えばイギリスの首相は,
在任期間に上限は設けられていないようですが,
イギリスについて独裁政治を心配する声は
ほぼ皆無と言ってよいでしょう。

このように,民主主義がしっかり根付いている国なら,
最高権力者の在任期間に上限がなくても大丈夫だと
言えるかもしれません。

日本は…

わが国日本についても,
民主主義は根付いていると言えそうです。

暴君が出てきそうになったら国民が止めると思うので,
その点はあまり心配していません。

ただ,自民党の一党独裁はどうにかなりませんかね。

日本の政治を見ていると,
二大政党制が羨ましくなります。

国民に2つの選択肢しかない点は
マイナス要素かもしれませんが,
与党が落第点の政治をしたら
次の選挙で下野させられるという緊張感があることは,
相当なプラス要素だと思うのです。

日本の自民党は,国民軽視の政治をしても,
政権を追われるところまではなかなか至りません。

至ったとしても,自民党に代わる政権が
多党連立になって不安定だったり,
政権担当経験がないため上手くいかなかったりで,
すぐに自民党が与党に返り咲いてしまいます。

アメリカやイギリスが
二大政党制になった経緯を調べて参考にすれば,
日本も同様の政治環境を実現できるのでしょうか。

ただ,難点として,
民主主義が根付いているかどうかは,
外部から見ると判断が難しいことが挙げられます。

その点,最高権力者の在任期間に上限規定があるかどうか,
およびその上限が正しく機能しているかは,
外部から見ても判断がつきやすく,
ごまかしが利きにくいという利点があります。

ゆえに,独裁政権の出現を抑制する手段としても
活用しやすいと言えます。

筆者は,最高権力者の在任期間に上限規定を設け,
その規定を正しく機能させることの必要性は,
もっと重視されるべきだと思います。🛎️ その場合,日本やイギリスも
憲法改正が必要になりますね。

なお,民主主義の定着と最高権力者の在任期間制限は
両立できるものですので,
両立させるのが望ましいでしょう。

その2つが両立している国は,
独裁政権を生み出す危険性という意味では,
かなり安全と言ってよいと思います。

まとめ

改めて,この記事の主張を以下に示します。

この記事で主張したこと
  • 独裁政権は,素晴らしい政治が
    長く続く可能性もあるが,
    誰も止められない暴君を生み出す危険性もあり,
    振れ幅とリスクが大きい体制であると言えそう。
  • 独裁政権の発生を避けるには,民主制度よりも,
    最高権力者でいられる期間を
    有限にすることの方が効果的だと思う。
  • 国のトップでいられる期間が限られていれば,
    悪事を重ねてでも独裁体制を築こうという気に
    なりにくいはず。🛎️ 任期が終われば,
    警察への影響力などを失って
    逮捕されるおそれもある。
  • 中国の習近平国家主席は,
    本来2期までと定めていた最高法規を
    改定してまで3期目に突入した。
    かなりの 危険信号 に見える。

読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。

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筆者について


「累積黒字の考え方」と題する
経済学試論の創始者。
並びに,上記試論を紹介するサイト
世界経済蘇生秘鑰>の創設者。

既存の経済学に
非常に詳しいわけではなく,
大学教養課程レベルの
マクロ・ミクロ経済学を
ひと通り学んだ程度と自己評価。

しかし,従来の経済学に
どっぷり浸かっていなかったからこそ,
従来の経済学と全く視点の異なる
上記試論が出てきたのではないかと
思っている。

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