政府支出の「乗数効果」は,以前より弱くなっているのではないか

2023/07/21

📂経済学の違和感 違和感Lv.2 一億総中流 限界消費性向 財政支出 乗数効果の低下 貧富の格差

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  • 2023/07下旬 初稿公開

昨今の政府支出は,GDPを想定通りに
増やせているとは思えない

近現代の市場経済で「経済対策」「景気対策」と言えば,
たいていは減税または政府支出です。

今回は政府支出に焦点を当てます。

政府支出は,内容もさることながら,
GDP増加の効果を狙うものでもあるとされています。

政府自身が消費を行うとともに,

その政府支出により収入の増えた企業が従業員に
より多くの賃金を支給することで民間消費を刺激し,
民間消費の増加によって収入の増えた企業が
従業員により多くの賃金を支給することで
さらに民間消費を刺激し・・・

という連鎖反応により,
政府支出の額よりはるかに大きなGDP増加が
見込めるのだそうです。🛎️ この時点で違和感たっぷりではありますがね。
筆者は,GDP増大の効果とか関係なく,
内容的に政府が支出するべきものだけ
支出すればよいという立場です。

これは,経済学用語で「乗数効果」などと呼ばれています。

筆者は,その乗数効果について,
実は 以前に比べて弱っているのではないか と疑っています。

バブル崩壊以降,日本政府は大規模な経済対策を繰り返し,
国の借金を増やし続けているにも関わらず,
GDPはほとんど伸びていないのですから,
疑いたくもなるというものです。

筆者は,GDPを伸ばすことは必ずしも
経済状況の改善に繋がらないと思っています。

しかし,そこに同意しない人でも,
財政支出がGDPを増やす効果が
以前より薄れているとすれば,
無視するわけにはいかないでしょう。

この記事では,現代日本において
乗数効果が以前より弱っているかもしれないと
疑う理由を説明します。

結論を先に知りたい方へ

この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。

この記事で主張すること
  • 乗数効果の大きさは,限界消費性向によって決まる。
  • 限界消費性向は,富裕層や貧困層で低く,
    中間層で高いと思われる。
  • 現代の日本は,貧富の格差の拡大により,
    富裕層と貧困層が増え,中間層が減った。
    すなわち,限界消費性向の低い世帯が増えたことで,
    財政支出の乗数効果も下がっているのではないかと
    筆者は疑っている。

それでは,本論に入ります。

乗数効果は,限界消費性向で決まる

標準的なマクロ経済学で言われていることですが,
乗数効果の大きさは,限界消費性向によって
決まるとされています。

限界消費性向とは,ある世帯の所得が伸びた時,
その伸びた分のうち,どれだけを支出に充てるかという
割合のことです。

これが高いほど,上記の

政府支出→企業の利益増加→従業員の賃金増加
→国民の消費増加→企業の利益増加→従業員の賃金増加
→・・・・・・

という連鎖反応は太く長く続きます。

限界消費性向が高い層と低い層

現代日本において乗数効果が薄れているとしたら,
その原因として考えられるのは,
貧富の格差が拡大したことではないかと思います。

日本の世帯を「貧困層」「中間層」「富裕層」に分けて
考えてみましょう。

日本は貧富の格差が拡大していると言われるので,
昔に比べて,貧困層と富裕層が増え,
中間層が減っていると考えられます。

ここで1つ考えていただきたいことがあります。

「貧困層」「中間層」「富裕層」の中で,
最も限界消費性向が高いのはどの層でしょうか

筆者の感覚では,この中で最も限界消費性向が高いのは,
中間層だと思います。

富裕層は,使いたいだけお金を使える状況にあるので,
これ以上所得が伸びても,逆に所得が多少減っても,
それを理由に自らの消費行動を大きく変えることはありません。

逆に貧困層は,まず生活苦から脱したいと
望む傾向が強いため,所得が伸びても,
貯蓄または借金返済を中心に考える人が多いでしょう。🛎️ 所得が増えた分だけ食べ物を
買わないといけないような
最貧困層は別ですが。

所得が伸びた時に支出を増やそうと考えるのは,
生活は苦しくないけれども買いたいものを
多少我慢している「中間層」だと思います。

貧富の格差拡大が乗数効果を弱らせる可能性

昔の日本には,「一億総中流」という言葉があったくらいです。

もしかしたら揶揄やゆの色を含む表現だったのかもしれませんが,
今から見ればうらやましい限りです。

この言葉を単純に解釈するなら,
国民の多くは生活が苦しいと感じていなかったことを
意味するのですから。

すなわち,「中間層」が多い状態です。

限界消費性向は高く,不況時に財政支出を増やせば,
乗数効果も大いに期待できたことでしょう。

一方,前述の通り,今の日本は,
富裕層と貧困層が増え,中間層が減ったと思われます。

その状況下では,財政支出によって
貧困層の各世帯の所得が多少増えても,皆

「よかった,これで借金が減る」
「これで少しは貯金ができる」

としか思いません。

乗数効果の鎖はあっという間に先細りとなり,
消えてなくなるでしょう。

そして,実施した経済対策の効果が低ければ,
次回の経済対策はより大規模なものにならざるを得ません。
そのため,経済対策の規模が大きくなっていくのです。

実際,「過去最大の経済対策」のような言葉を
何度も聞いた覚えのある人も多いでしょう。
国の債務残高が加速度的に膨れ上がってきたのも,
当然の成り行きであったように感じられます。

筆者は乗数効果を重視してはいない

筆者はもともと日本のような成熟経済において
経済成長は必要ないと考えています。

よって,乗数効果によりGDPを増やすことも,
別段重視していません。

ただ,近年乗数効果が低下しているという噂は
確かにありますので,参考になるかもしれないと思い
仮説を提示しただけです。

無論,乗数効果がどうであれ,
財政支出が不要ということはありません。

しかしながら,現在の経済学は不可欠な視点を欠いているため,
その欠落に気付かないままどんな経済対策を施しても,
決してうまくいくことはないと確信しています。

その視点について説明するのは
当ブログの役割を超えるので,
姉妹サイト<世界経済蘇生秘鑰>に譲ります。
興味がありましたら,ぜひそちらも覗いてみてください。

  • お急ぎの方は,理論の中核部分を解説した 概説ページ がおすすめです。🛎️ 短い文書ではありませんが,極めて平易です。
    標準的な高校生くらいの知識と読解力でも
    すんなり大筋を理解できると思います。

まとめ

改めて,この記事の主張を以下に示します。

この記事で主張したこと
  • 乗数効果の大きさは,限界消費性向によって決まる。
  • 限界消費性向は,富裕層や貧困層で低く,
    中間層で高いと思われる。
  • 現代の日本は,貧富の格差の拡大により,
    富裕層と貧困層が増え,中間層が減った。
    すなわち,限界消費性向の低い世帯が増えたことで,
    財政支出の乗数効果も下がっているのではないかと
    筆者は疑っている。

あくまで仮説であり,
確信があるわけではありませんが,
一考に値するのではないでしょうか。

読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。

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筆者について


「累積黒字の考え方」と題する
経済学試論の創始者。
並びに,上記試論を紹介するサイト
世界経済蘇生秘鑰>の創設者。

既存の経済学に
非常に詳しいわけではなく,
大学教養課程レベルの
マクロ・ミクロ経済学を
ひと通り学んだ程度と自己評価。

しかし,従来の経済学に
どっぷり浸かっていなかったからこそ,
従来の経済学と全く視点の異なる
上記試論が出てきたのではないかと
思っている。

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