「需要の創出」は社会にとって本当に必要なのか

2023/07/21

📂経済学の違和感 違和感Lv.4 需要の創出 足るを知る 内需拡大 貧困問題

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  • 2023/07下旬 初稿公開

「需要の創出」が必要であるとする人の意見

経済にある程度興味のある方ならば,

日本経済の改善のためには,
大規模な需要の創出が必要である。

との意見を耳にしたことがあるでしょう。

国民の多くが欲しがる商品が開発されれば,
それを大量に生産して大量に売ることで,
経済が活性化する。

それによって雇用を確保できるし,
国民の生活はより豊かになるし,
経済成長も実現するし,いいことずくめ。

だから,日本経済の改善のためには,
大規模な需要の創出が求められる。

こんな感じの主張です。

これは,一部の人が言っているのではなく,
経済の有識者100人に聞けば
90人以上が賛同するくらいに
支配的な意見であると認識しています。

この記事では,「需要の創出」に対する
筆者の感覚や意見を述べたいと思います。

結論を先に知りたい方へ

この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。

この記事で主張すること
  • 成熟経済に「需要の創出」など必要ない。
  • 「需要の創出」は,昔に比べて
    はるかに難しくなっている
  • 日本国民の多くは,市場の品揃えに満足している。
    これは,文句なく幸せなことである。
    普通に考えて,そこに問題はない。
  • 経済学は,足るを知るべき。
    すなわち,(成熟経済においては)
    現在の市場の需要と供給に満足できるようになるべき。
  • 社会の求めに応じて
    新商品を開発するのはもちろんよいが,
    経済対策のために推奨するものではない。
  • 日本の貧困問題は,市場に物が足りないから
    起きているのではない。
    単に,お金の配分に失敗しているだけ。
  • 日本の貧困問題を解決したければ,
    素直にお金の流れに注目した方が近道。

それでは,本論に入ります。

需要の創出とはどのようなものか

需要の創出の一例として,
「電球」を挙げてみましょう。

電球がなかった時代は,
日が落ちたら基本的に活動停止だったらしいですね。

火を使ったランプなどはあったわけですが,
明るさは限られていますし,何より危ないですし。

その時代は,火を使うことなく
夜に手元を明るく照らしたいという願望こそあれ,
不可能だからと諦めてしまっていたわけです。

しかしそこに電球が発明され,
生産体制が整いました。

そこではじめて,
夜に手元を明るく照らしたいという願望は,
満たすことのできる需要として,
経済的に意味を持つようになります。

すなわち,需要が創出されたのです。

需要の創出というのは,大体このようなものですね。🛎️ 他にもタイプはあると思いますが。

潜在的に,こんなものがあったらいいのに,
こんなことができたらいいのにという願望があって,
それを満たすことが可能になったとき,
需要が創出されたことになります。

需要の創出は,昔に比べて難しくなっている

この「需要の創出」ですが,現代の日本においては,
昔に比べてはるかに難しくなっていると思います。

国民が欲しがるありとあらゆる物やサービスが,
市場に溢れているからです。

昔に比べて,日本は本当に,
豊かで便利な国になりました。🛎️ それは日本に限りませんが,
日本は他の多くの国よりかなり早く
その状態に達したと言えるでしょう。

娯楽の種類も豊富で,
趣味の選択肢にも事欠きません。

これ以上豊かで便利で楽しい世の中と言われても,
どのように豊かで便利で楽しくなるのか,
想像することさえ容易ではありません。

まさに,成熟経済 です。

このような経済情勢のもとで
需要を創出しろと言われても,
相当な無理難題です。

もちろん,余地がまったくないことはないでしょうが,
日本のような成熟経済においては,
コンスタントに需要を創出することで経済対策をと考えても,
うまくいかないと思います。

それでもなお,万難を排してでも
「需要の創出」を強行するべきでしょうか。

経済学は,足るを知るべき

日本経済について,このように
需要創出の必要性を主張する意見が出てくる理由も,
国民が欲しがるもののほとんどが
既に市場に存在するためである,
と考えてよいでしょう。

国民が欲するものが市場に十分に出回っていないなら,
それを作って売ることに注力すればいいのであって,
新たに需要を創出する必要などないですから。

実際,現代日本の市場で供給される物やサービスの
種類や量が足りないと考える人は,
おそらく皆無に近いでしょう。

日本国民の多くは,
市場で供給される物やサービスの質や量に
かなりの程度満足しているに違いありません。

にもかかわらず,経済学は,
国民が欲しがりそうなものを,
わざわざ見つけ出すか作り出すかしてでも,
需要を創出するべきだ
と主張するのです。

国民は市場の品揃えに満足しているというのに,

現状に満足させてはならぬ,
生産者側は知恵を絞って国民の物欲をあお

と言っているわけです。

一般的な常識とはだいぶ異なりますが,
経済学は,それでよいのですか?

「足るを知る」を美徳とする一般常識からすると,
この主張は物欲を礼賛らいさんしすぎているのではないでしょうか。

繰り返しになりますが,日本国民の多くは,
市場の品揃えに満足しているはずです。

これは 文句なく幸せなこと です。
普通に考えて,そこに問題はありません。

ならば,経済学も,そこはそれでOK,
無理に変化を促す必要はないと
認められるようになるべきだと思うのです。

経済学も,時代に合わせて,
成熟経済にも適合するよう
進化する必要があるのではないでしょうか。

新規商品開発が一切不要ということではない

念のため補足しますが,国民が欲していないものは
一切開発が必要ないわけではありません。

例えば,環境問題の緩和に寄与する技術や商品は,
仮に国民の意識が低く,誰も望んでいないとしても,
開発をやめるべきではないでしょう。

しかし,そのようなものも,政府が奨励するのであれば,
本来の目的(この例の場合は環境問題の緩和)のために
奨励すべきであって,
経済対策を目的として奨励するのは筋違いです。

貧困層が増えてしまった原因を
素直な視点で考えたい

日本はもはや,貧困問題を抱える国です。

以前より豊かになっているようでいて,
生活必需品を買えずに生活が苦しくなっている家庭は,
昔より確実に増えています。

それは,市場に物が足りないから買えないのではありません

単に,お金を十分に持っていない人が増えたのです。

ならば,そうなってしまったのはなぜかを考えるのが
本筋だと思います。

その際は,当然ながら,
特に問題がないと思われる市場の状態などではなく,
素直にお金の流れに注目して考えるべきでしょう。

なお,現代の日本で貧困層が増えてしまった原因については,
当ブログでは述べていません。

筆者が考えるその原因に興味のある方は,
姉妹サイト<世界経済蘇生秘鑰>をご覧ください。

  • お急ぎの方は,理論の中核部分を解説した 概説ページ がおすすめです。🛎️ 短い文書ではありませんが,極めて平易です。
    標準的な高校生くらいの知識と読解力でも
    すんなり大筋を理解できると思います。

まとめ

改めて,この記事の主張を以下に示します。

この記事で主張したこと
  • 成熟経済に「需要の創出」など必要ない。
  • 「需要の創出」は,昔に比べて
    はるかに難しくなっている
  • 日本国民の多くは,市場の品揃えに満足している。
    これは,文句なく幸せなことである。
    普通に考えて,そこに問題はない。
  • 経済学は,足るを知るべき。
    すなわち,(成熟経済においては)
    現在の市場の需要と供給に満足できるようになるべき。
  • 社会の求めに応じて
    新商品を開発するのはもちろんよいが,
    経済対策のために推奨するものではない。
  • 日本の貧困問題は,市場に物が足りないから
    起きているのではない。
    単に,お金の配分に失敗しているだけ。
  • 日本の貧困問題を解決したければ,
    素直にお金の流れに注目した方が近道。

読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。

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筆者について


「累積黒字の考え方」と題する
経済学試論の創始者。
並びに,上記試論を紹介するサイト
世界経済蘇生秘鑰>の創設者。

既存の経済学に
非常に詳しいわけではなく,
大学教養課程レベルの
マクロ・ミクロ経済学を
ひと通り学んだ程度と自己評価。

しかし,従来の経済学に
どっぷり浸かっていなかったからこそ,
従来の経済学と全く視点の異なる
上記試論が出てきたのではないかと
思っている。

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