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- 2023/07下旬 初稿公開 🛎️ ウクライナ戦争まっただ中。
ウクライナ軍にも道徳上の問題はある
2022年 2 月に始まったウクライナ戦争における
ロシアの悪逆ぶりは酷いものです。
よくここまで非道なことを思いついて実行できるものだと
閉口してしまいます。
それに対して,ウクライナ軍は,
総じて理性的に行動しているように見えますが,
問題点が全く伝わってこないわけではありません。
- 強制的な徴兵。
- 捕虜への虐待。
- 自軍兵の見殺し。
- 民間人を巻き添えにする戦い方。
- 軍隊内での職権乱用,ハラスメント。
- 西側からの支援で得た武器の横流し。
これを見て,
ウクライナもロシアと似たようなものじゃないかと
評する人もいるようです。
ウクライナ国外でこの戦争を見ている我々は,
ウクライナにどの程度きれいな戦いを
求めるのが妥当なのでしょうか。
ウクライナがクリーンな戦いを貫けず,
部分的にダーティーな戦いに走ってしまった場合,
我々はどう受け止めればよいでしょうか。
この記事は,確定した意見を示すと言うよりは,
問題提起に重きを置いています。
この記事の主張を先に知りたい方へ
この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。
この記事で主張すること
- 汚い戦いを尽くす大国ロシアに対し,ウクライナは,
多少汚い戦い方をしてでも勝つか,
きれいな戦いに徹して負けるかの選択を
常に迫られている。 - ウクライナが,汚い戦い方をしてでも
勝つ道を選択したとしても,
他国にいる人々が
軽々に非難できることではない。🛎️ 戦術的に無意味な問題行動は,
非難されても仕方ないとは思いますが。 - ロシア軍による国際法違反は
ロシア側のみに責任があり,
ウクライナ軍による国際法違反は
ロシアとウクライナの双方に責任があると
思うくらいでちょうどよい。🛎️ ロシアが侵略戦争を始めなければ,
ウクライナ軍による非人道行為なども
起こらなかったはずなので。 - ウクライナ側は,
自軍が行った国際法違反の行為について,
検証する必要がある。🛎️ 今は無理なら
戦後でもよいです。
ロシアが汚い戦いをする理由
冒頭でも述べた通り,ロシアの汚い戦いぶりは
目に余るものがあります。
今思いついたものだけでも,
下に示すように,多岐に渡ります。
- 非軍事目標や民間人への攻撃
- 人民の盾
🛎️
民間人を軍人と同じ場所にいさせることで,
敵がその場所を攻撃しにくくするという
心理効果を狙う作戦。 - ウクライナ人の子供の連れ去り,ロシア人化
🛎️
ロシア語教育やロシアの愛国教育を施したり,
ロシア人への養子縁組をしたりするそうです。 - 占領地域の住民への非人道行為
- 占領地域からの徴兵
🛎️
ウクライナ人をロシア側の兵士として徴集し,
ウクライナ人どうしで戦わせることになります。 - 都市部に対する大量破壊兵器の使用
- 原子力発電所の軍事拠点化
- ダムの破壊
どうしてこのようなことをするのかと
怨嗟を込めた疑問を投げかける人も多いと思います。
その疑問は,答えを求めて
出されるものではないと思いますが,
あえて正面から答えるなら,
戦争を有利に進めるため でしょう。
一部,ロシア軍の残虐性に起因するものや,
ストレス解消のために
行われているものもあるでしょうが,
大部分は「戦略的,戦術的に有利だから」です。
上に挙げたような行為は,
たとえ戦術面で有効であっても行わないようにと,
戦時国際法で禁止されています。
しかし,ロシアが国際法を意に介さないことは,
皆様もご存知の通りです。
ウクライナはきれいな戦い方で対抗できるのか
ただでさえ,ウクライナはロシアに比べて小さい
ウクライナは,決して小国ではありません。
国土面積,人口,経済規模,軍事力などを合わせた
総合力で比べるならば,
ソ連崩壊により独立した国の中では,
ロシアに次いでナンバー2と言って
差し支えない水準だと聞いています。
とは言え,あらゆる面において
ロシアよりはるかに小さい国であることは,
否定のしようがありません。
お互いに国際法を守って正々堂々と戦ったとしても,
ウクライナがロシアに勝つことは至難です。
ウクライナの葛藤
しかも,ロシアは戦場での優位を優先して,
考えられる限りの,時として人間の想像を超えるほどの
汚い戦い方を尽くしています。
これに対して,ウクライナは,
戦時国際法を遵守する戦い方だけで
対抗できるのでしょうか。
普通に考えて,無理です。
ボクシングで,ウェイトの階級がはるか上の敵選手が,
肘打ちやら頭突きやら,あらゆる反則を駆使しながら
向かってくるようなものです。
ウクライナにはできるだけ
クリーンな戦いをしてほしいと願うのは自然ですし,🛎️
もちろんロシアにもですけど,
願っても叶わないことが分かっているので…
(それ以前にロシアはウクライナと
戦っていること自体が不当ですが)
その方が応援しやすいのは理解できますが,
それで勝つのは無理難題すぎるでしょう。
ウクライナ軍は,常に葛藤と戦っているはずです。
その葛藤は,語弊を恐れず言えば,
クリーンな戦いをして負けるか,
ダーティーな戦いをしてでも勝つか
の二択です。
ウクライナ軍は,外から見ている限り,
総じて理性的で国際法に則った戦い方をしています。
しかし,きれいな戦いだけで,
自軍に大した損害も出さずに
圧勝できる相手ではありません。
外部の人間が,ウクライナはきれいな戦いに
徹してほしいと願うのは簡単です。
ただ,その方針によって
ウクライナ側の損害が大幅に増える可能性や,
ウクライナが負ける可能性を念頭に置いた上で,
それでもそう願うべきかを
自問する必要はあると思います。
汚い戦いを推奨はしないけれども
筆者とて,表立ってウクライナに
汚い戦いをしてでも勝ってくれとは言えません。
しかしそれ以上に,
きれいに戦って負けろとは
口が裂けても言えません。
きれいに戦って圧勝できるだけの兵器を
西側諸国は供与できていないのですから。
ウクライナが部分的に
ダーティーな戦いを選択したとしても,
安全圏にいる我々が
軽々に非難できることではないと思います。
少なくとも,ウクライナも汚い戦いをするのだから
もうどっちが勝ってもいいやなんて結論は
ありえないと思います。
ロシア領内への越境攻撃について
2023年 5 月頃の
ウクライナ側勢力によるロシア領内への越境攻撃を
疑問視する声が多かったことには驚きました。
ロシアと同じだと思われたら
西側からの支持や支援が鈍るかも,
といった主張だったかと思います。
いや,単純に,
ウクライナ側だけ越境攻撃を封じられたら,
戦術的に不利でしょ?
🛎️
国境付近の戦闘においては特に。
まさか,越境攻撃が可でも不可でも,
戦術的に大して差はないなんてことはないですよね?
しかも国際法上何の問題もないのに,
西側諸国の都合で不可とされたら,
そりゃあウクライナは不満どころではないですよ。
こういうところで,世論は大事だなと実感します。
ウクライナによる越境攻撃を見た瞬間に,
これは正当だと即断できる国際世論であれば,
西側の支持と支援がどうこうという心配は
出ないはずですから。
参考記事:
ウクライナはロシア領を攻撃してはいけないか
ウクライナ軍による国際法違反の責任の所在
どちらに理・非があるのか分からない戦争であれば,
国際法に違反する行為の責任は,
行為を行った側の国にあるとするのが普通でしょう。
その常識に異論はありませんが,
今回のウクライナ戦争においては,
常識に修正を加えたいです。
この戦争は,どれだけ考えても
ほぼ一方的にロシアが悪いです。
この戦争において,
ロシア軍による国際法違反は,
もちろんロシア側にのみ責任があります。
そこは常識通りで構いません。
しかし,ウクライナ軍による国際法違反は,
ロシアとウクライナの双方に責任がある
と思うのです。
つまり,ロシア側にも責任があると。
だってそうでしょう?
ロシアが侵略戦争を始めなければ,
ウクライナ軍による国際法違反も
起こらなかった のですから。
今回の戦争でウクライナ軍が
国際法に違反するのを見たら,
これはウクライナとロシア両国の責任だと
直ちに認識するくらいの感覚が
ちょうどよいのではないでしょうか。🛎️
責任の割合は個々の事案ごとに評価すべきですが,
細かいことはともかく。
ウクライナは,自軍の行為の検証を
怠らないことが大事
もちろん,ウクライナ軍による国際法違反を
全て黙認するわけではありません。
ロシア側にも責任はあると主張していますが,
ウクライナ側に責任がないわけではないですから。
特に,ウクライナ軍兵士が復讐やストレス解消のために
敵対者に対して非人道行為に走るようなことは
控えてほしいと思います。🛎️
もっとも,これに該当する行為に対しても,
筆者自身は批判を控え気味にしようと思っています。
長期間戦場にいることによるストレスは,
到底想像が及ぶものではないので。
ウクライナ軍の将兵は,重々承知でしょうが,
自軍による非人道行為の数と酷さが増すほど,
西側諸国からの支援が鈍り,
自国が敗戦に近づくことを,
常に意識しなければなりません。🛎️
今のところ,支援に影響するほど
酷くはないようですが,
悪い噂もちらほら聞こえてきます。
また,ウクライナ政府は,自軍による
戦時国際法違反が疑われる行為について,
できる限りの検証をして
国際社会に見せる必要があります。
今が無理なら戦後でも構いません。
-
国際法に適合しているとは言えないその行為は,
戦争を有利に進めるために有効であったか。 -
その有効性の度合いは,
行為の悪質性・非人道性に比べて
大きかったと言えるか。 - 容易に思いつける代案はなかったか。
戦術的に有効なら許せるわけではないと思いますが,
実行者を罰すべきかどうか,酌量の余地があるかどうかを
上記のような観点で評価するのは妥当でしょう。
蛇足ですが,
西側から供与された武器の横流しは,
酌量の余地がない部類ですね。
自国の勝利よりも自身の利益を優先するなど,
とんでもない裏切りです。
それを警戒して,西側諸国が支援を
渋っている可能性はあると思います。
国際社会は,戦後のウクライナもよく見るべき
ウクライナ政府による自軍の違反行為の検証は,
大部分が戦後になると思います。
我々日本を含む国際社会は,
それも含めてウクライナをよく見ることが大事です。
戦争が終わったと同時に
ウクライナから目を離してはいけません。
そして,ウクライナ側は,
それも含めて国際社会に見られていることを
意識することが大事だと思います。
まとめ
改めて,この記事の主張を以下に示します。
この記事で主張したこと
- 汚い戦いを尽くす大国ロシアに対し,ウクライナは,
多少汚い戦い方をしてでも勝つか,
きれいな戦いに徹して負けるかの選択を
常に迫られている。 - ウクライナが,汚い戦い方をしてでも
勝つ道を選択したとしても,
他国にいる人々が
軽々に非難できることではない。🛎️ 戦術的に無意味な問題行動は,
非難されても仕方ないとは思いますが。 - ロシア軍による国際法違反は
ロシア側のみに責任があり,
ウクライナ軍による国際法違反は
ロシアとウクライナの双方に責任があると
思うくらいでちょうどよい。🛎️ ロシアが侵略戦争を始めなければ,
ウクライナ軍による非人道行為なども
起こらなかったはずなので。 - ウクライナ側は,
自軍が行った国際法違反の行為について,
検証する必要がある。🛎️ 今は無理なら
戦後でもよいです。
この意見は正しいと言えるのか,
それともやはり危険な思想なのか,
確信は持てません。
しかし現在は,
ウクライナにクリーンな戦いを求める傾向が
強すぎるようにも感じます。
そこで,読者様が考えるきっかけにでも
なってくれればと思い,
ネットの隅っこに問題提起の記事を置いておく次第です。