ロシアの核の脅しにどの程度屈するべきか

2023/07/22

📂ウクライナ戦争 核の脅し

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  • 所属カテゴリー: 【ウクライナ戦争】
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  • 2023/07下旬 初稿公開 🛎️ ウクライナ戦争まっただ中。

ロシアの核の脅しは効いている

ウクライナ戦争において,
ウクライナを支援する西側諸国は,
表面上は,

ロシアの核のおどしには
決して屈しない

との姿勢を見せ続けています。

しかし実際には,西側諸国の対応は,
明らかにロシアの核の脅しに屈し気味です。

ウクライナへの武器支援を出し渋ったり,
ウクライナによるロシア領への
越境攻撃を嫌がったり。

これらの傾向は間違いなく,
ウクライナの戦場において,
ロシア側に有利に働いています。

もっとも,その傾向を,
「核の脅しに屈する」という表現の
マイナスイメージに引きずられて,
安易に批判するのも短絡的でしょう。

この記事では,ウクライナや西側諸国が,
ロシアによる核の脅しにどう対処するべきかについて
考えてみました。🛎️ 確たる結論が出たとは言えませんが,
議論を良い位置からスタートするための
土台にはなるかと思います。

ロシアの核兵器はメンテナンス不足で機能しないのでは,
という意見も聞いたことがありますが,
この記事では機能することを前提としています。

結論を先に知りたい方へ

この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。

この記事で主張すること
  • 西側諸国がいずれウクライナを勝たせるなら,
    ロシア・プーチンが敗北間際に追い込まれる局面が,
    遅かれ早かれ必ず訪れる
  • ロシア・プーチンを急速に追い込んだ場合と
    ゆっくり追い込んだ場合とで,
    核が使われる確率に大きな差があるかは疑わしいし,
    知りようがない。
  • 核の脅しに屈することには,
    確実なメリットは存在しない一方,
    確実なデメリットは存在する🛎️ 単純に,核の脅しをした者に
    利益を与えてしまうという
    デメリットがあります。
  • 心情的に怖いのは分かるが,
    核の脅しは完全に無視するのが最善という結論も
    ありうる。🛎️ 身代金の要求には応じないのが
    セオリーになっていると聞きますが,
    考え方としては同じです。
  • 今回のウクライナ戦争についても,
    ロシアの核の脅しを完全に無視して,
    武器供与を存分に行い,
    一気にウクライナを勝たせる手は
    大いに考えられる。🛎️ そうすれば本当に勝たせられるかとか,
    西側が武器供与を渋る理由が
    ロシアの核の脅しだけかとか,
    疑問は残るけれども。

それでは,本論に入ります。

核の脅しに屈することのメリットは何?

言葉の響きに引きずられるべきではない

「核の脅しに屈する」と言うと,
本当は屈しないべきであるのに
屈しているかのような響きに聞こえてしまいます。

その響きに引きずられて
拙速な結論を出すべきではありません。

問題は,核の脅しに屈することに
明確なメリット(利点)があるかどうかです。

明確なメリットがあって,それが大きいのであれば,
残念ながら核の脅しにある程度は屈するべきという結論に
ならざるをえません。

核の脅しに屈するメリットがあるとすれば

核の脅しに屈することのメリットとして考えられるのは,
ずばり,核戦争を回避できる確率が上がることでしょう。

だからこそ,西側諸国は,
何をするにもロシアの顔色を窺っているわけです。

しかし,そこで改めて問いたい。

本当に,核戦争を回避できる確率は
上がっていますか?

西側諸国は,遅かれ早かれ
プーチンを追い詰める予定

今回のウクライナ戦争に関して言えば,
西側諸国は,いずれはロシア・プーチンを
敗北に追い込むつもりなんですよね。

急速にであろうとゆっくりとであろうと,
ロシア・プーチンが敗北寸前まで追い詰められたら,
核使用のリスクは極限まで高まります。

それは,ウクライナが勝つシナリオでは,
必ず通る局面 だと思います。

遅いか早いかの違いでしかありません。

となると,急速に追い詰めた場合が,
ゆっくり追い詰めた場合に比べて,
最終的に核が使用されるリスクが高いかどうかは,
全く分からないと思うのです。

狂人プーチンの思考は読みにくいです。

また,狂人でなくとも,
人の気まぐれは読みにくいです。

狂人の気まぐれ ともなると,
到底読み切れるものではありません。

つまり,プーチンが核を使うことを
確実に防ぐ手立てはありません。

プーチンが気付いた時には
ロシアの敗北が確定していて,
もはや核のボタンを押すチャンスもない。

そんな勝ち方ができるなら別ですが,
そうでもない限り,どんな経緯を辿たどろうと,
核の脅しへの譲歩によって
最終的にプーチンが核を使う確率を下げるのは
ほとんど不可能である気がします。

核の脅しが有効な未来と無効な未来

想定される未来は3通り

人類の未来は,核の脅しに屈するかどうかで,
大きく次の3つに分かれるのではないかと考えています。

  1. 核の脅しに屈し,
    核の脅しが有効であり続ける未来
  2. 核の脅しを無視し,核戦争が起きて,
    絶滅の危機に瀕した人類が
    心の底から反省する未来🛎️ どこかの国が核を使えば,
    その国に対して核による報復がなされ,
    核戦争になるという前提です。
    (報復に核が使われない可能性もありますが)
  3. 核の脅しを無視しつつ,
    運良く核戦争を回避し続けられる未来

核の脅しを全世界が無視すれば,
当然ながら核の脅しは無効化されます。

よって,上記の(2)と(3)は,
核の脅しが無効化されている未来です。

現状は(1)に近く,最善が(3)であることは
ほぼ異論が出ないところでしょう。

(3)を目指すのはもちろん結構ですが,
そのためには,核の脅しを無視する必要があります。

しかしその場合,どこかの狂人が核のボタンを押して
(2)が実現してしまう可能性は,
どれだけ外交努力を重ねても,
ある程度残ってしまうと思います。

つまり,「核の脅しを無視すべきか」という問題の本質は,
(3)を目指すために
(2)が実現するリスクを許容できるかです。

核戦争回避のために目を曇らせていないか

そもそも,(1)と(2)では,
どちらの方が良いのでしょうね。

筆者は現時点で判断がついていません。

もしも,(1)が(2)より良いわけではないとしたら,
核の脅しに屈するメリットは全く無いことになります。

これに関連してもう1つ,
思うところがあります。

人類絶滅の危機に瀕することなく
世界平和を獲得できるほど,
人類は賢いかどうか,です。

もちろん,今世界は,核の脅しの効果を最小化しつつ
平和を実現しようとしているのであり,
その試み自体は続けるべきだと思います。

しかし,もし(2)が不可避であるなら,
その前に(1)の時代が長く続くことの利点は
どれほどなのでしょうか。

また,(2)を避け続けるために,
(1)の時代が永遠に続くのは
良いことなのでしょうか。

(2)を避けようとするあまり,
(1)に甘んじ続けることが本当に良いのか。

核の脅しの問題を考えるにあたっては,
この観点も必要になるのではないでしょうか。

核の脅しを完全に無視するのが
最善である可能性も

それに加えて,筆者は,

核の脅しに屈することで,
核戦争が回避できる確率は上がる

との先入観自体にも懐疑的です。🛎️ 場合にもよりますが,
今回のウクライナ戦争では,前述の通り,
核の脅しに屈しても屈しなくても,
最終的に核が使われるリスクに
大差はないと思っています。

ならば思い切って,
上記の(3)が実現する可能性に賭けて,
あらゆる核の脅しを完全に無視するという選択肢
あるのではないかと思うのです。🛎️ 身代金の要求には応じないのが
セオリーになっていると聞きますが,
それと似た考え方です。

核の脅しに屈することのメリットが
はっきりしない一方,
核の脅しを無視することには,
単純かつ明確なメリットがあります。

核の脅しをした国に利益を与えないことです。

心情的に怖いのは分かりますが,
核が使われる確率をほとんど
コントロールできないのであれば,
結局のところ,核の脅しを完全に黙殺するのが
人類にとって最善なのでは,と思うわけです。

例えば,今回のウクライナ戦争においても,
ロシアの核の脅しを完全に無視して,
ウクライナへの武器支援を存分に行い,
一気にウクライナを勝たせるという手も
大いにあるのではないでしょうか。🛎️ そうすれば本当に勝たせられるかとか,
西側が武器供与を渋る理由が
ロシアの核の脅しだけかとか,
疑問は残りますが。

もちろん,核戦争を防ぐための
検討と努力は続けるべきです。🛎️ 筆者は,現状においては
核による核抑止は必要だと思いますし,
日本の核保有も否定はしません。

ただ,「核の脅しに屈する」という方針は,
確実なデメリットが存在する上に
確実なメリットが存在しないことを,
よく意識した上で議論を深める必要があると思います。

そうは言っても,筆者としては,
核戦争のリスクを受容してでも
核の脅しを無視するべきとまで
断言することはできません。

しかし,世界がその方向に向かったとしても
反対はしないつもりでいます。

まとめ

改めて,この記事の主張を以下に示します。

この記事で主張したこと
  • 西側諸国がいずれウクライナを勝たせるなら,
    ロシア・プーチンが敗北間際に追い込まれる局面が,
    遅かれ早かれ必ず訪れる
  • ロシア・プーチンを急速に追い込んだ場合と
    ゆっくり追い込んだ場合とで,
    核が使われる確率に大きな差があるかは疑わしいし,
    知りようがない。
  • 核の脅しに屈することには,
    確実なメリットは存在しない一方,
    確実なデメリットは存在する🛎️ 単純に,核の脅しをした者に
    利益を与えてしまうという
    デメリットがあります。
  • 心情的に怖いのは分かるが,
    核の脅しは完全に無視するのが最善という結論も
    ありうる。🛎️ 身代金の要求には応じないのが
    セオリーになっていると聞きますが,
    考え方としては同じです。
  • 今回のウクライナ戦争についても,
    ロシアの核の脅しを完全に無視して,
    武器供与を存分に行い,
    一気にウクライナを勝たせる手は
    大いに考えられる。🛎️ そうすれば本当に勝たせられるかとか,
    西側が武器供与を渋る理由が
    ロシアの核の脅しだけかとか,
    疑問は残るけれども。

デリケートな話題であり,
筆者も冷や冷やしながら出した記事ですが,
読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。

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筆者について


「累積黒字の考え方」と題する
経済学試論の創始者。
並びに,上記試論を紹介するサイト
世界経済蘇生秘鑰>の創設者。

既存の経済学に
非常に詳しいわけではなく,
大学教養課程レベルの
マクロ・ミクロ経済学を
ひと通り学んだ程度と自己評価。

しかし,従来の経済学に
どっぷり浸かっていなかったからこそ,
従来の経済学と全く視点の異なる
上記試論が出てきたのではないかと
思っている。

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