日本国憲法の第九条を改めて読んでみると

2023/08/15

📂国防・軍事 憲法改正 憲法九条 平和憲法

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  • 記事の状態: 有効(2024/08下旬時点)
  • 所属カテゴリー: 【国防・軍事】
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執筆時期・更新履歴 🛎️ 更新履歴は,
重要だと思う変更のみ
記します。
  • 2023/08中旬
    憲法九条は終戦直後には必要だったかも,
    という節を追加。
  • 2023/08中旬 初稿公開 🛎️ 終戦の日前後。
    ウクライナ戦争まっただ中。

ウクライナ戦争でようやく九条を意識した

筆者は,これまでずっと平和ボケしていたタイプです。

2022年 2 月に始まったウクライナ戦争で,
ようやく一応目が覚めました。

そこで,日本の安全保障で必ず話題に上る
日本国憲法第九条を改めて読んでみたのですが…

日本国憲法第九条

第九条
日本国民は,正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し,
国権の発動たる戦争と,
武力による威嚇又は武力の行使は,
国際紛争を解決する手段としては,
永久にこれを放棄する。

第九条 ②
前項の目的を達するため,
陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。
国の交戦権は,これを認めない。

どうでしょうか。
良い条文でしょうか。

この記事では,現在の第九条をどう読むべきか,
今後どうするべきかについて考えてみました。

結論を先に知りたい方へ

この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。

この記事で主張すること
  • 極端な平和主義を謳う日本国憲法第九条は,
    終戦直後の時期には必要だったかもしれないが,
    時代に合わなくなってしまった
  • 現在の憲法九条は,
    防衛戦争まで禁止しているようにしか読めない
    侵略戦争は不可,防衛戦争は大いに可と
    はっきり読める条文に改定する必要がある。
  • 護憲派の主張は,
    軍国主義という極端を避けるために,
    逆の極端に走っている状態である。
  • 全てを話し合いで解決する方針は,
    可能かもしれないが綱渡りすぎる🛎️ しかも,自分たちが対応を誤らなければ
    渡り切れるものでもありません。
    敵対国によって揺さぶられるおそれが
    あるためです。
    🛎️ 極端な平和主義のまま綱から落ちれば,
    国の滅亡か他国の属国化です。
    さすがに,その方針に国民の命を預けるのは
    無理がありすぎると思います。
  • 憲法九条を改正すると,
    日本に敵対的な周辺国が
    「日本が再び軍国主義に」などと
    騒ぎ出すと思われるが,無視でよい。🛎️ 「あなたの国の憲法で,
     従来の日本国憲法第九条のような
     条項を制定したら,話を聞きます」
    と言えば反論もないはず。

それでは,本論に入ります。

第九条のポンコツぶりに戦慄

明らかに防衛戦争まで禁止している条文

前述の通り,筆者はウクライナ戦争で
ようやく国防に興味を持ち,
改めて日本国憲法第九条を読んでみたのですが,
あまりのポンコツぶりに戦慄しました

いやだってこの条文,
明らかに 防衛戦争まで禁止してる でしょう?

何も知らない人にこの条文を読ませたら,
百人中百人がそう読むとしか思えません。

解釈でどうにかなるほど曖昧な条文ではない

今,ウクライナはロシアと戦争してますよね。
交戦してますよね。🛎️ 2023年 8 月時点。

自衛権の行使をしているだけだから
戦争してるわけじゃないなんて解釈を
聞いたことがありますが,無理があるでしょう。

仮にそれが正しい解釈であるとしても,
素人にはまず分かりません。

素人には分からない点が問題なのです。

例えば,筆者が武器を取って
日本に侵略してきた敵兵と戦うとしたら,
この条文が頭にちらついてしょうがないです。

敵兵を見つけたがこの場合は
先制攻撃してよいのかとか,
刑法の緊急避難に当たる状況と考えて
問題ないかとか。

そんな雑念で判断が遅れて
あえなく命を落とすことが
容易に想像できます。

筆者はデリケートすぎるのかもしれませんが,
現行の第九条を完全に無視して
戦える人ばかりでもないでしょう。

少なくとも,日本国憲法の第九条は,
防衛戦争の時は,自衛隊員や国民が
迷いなく戦えるような条文
改正すべきだと思います。

国際法で許されているからOK,も無理筋

防衛戦争は国際法で許可されているなんてことも
関係ありません。

国際法で許可されていて,
国内法で禁止されていれば,
国内では禁止です。

戦後しばらくは必要な条文だったかもしれない

終戦直後は,軍国主義から抜け出せない人も多かったはず

憲法九条のポンコツぶりに戦慄と述べましたが,
この条文は最初から駄目だったわけではない
とも思います。

戦後しばらくは,旧日本軍の生き残りで,
戦いを継続したいと考えていた人も多かったでしょう。

表舞台からは姿を消しても,
唐突に示された平和主義に順応するのに
時間がかかる人は多かったと思います。

そのような人々が一般社会に多く潜む中で,
極端な平和主義を謳う憲法九条は,
一定の効果を発揮した可能性があると思います。

すなわち,防衛であろうと何であろうと,
日本の戦争への関与を全否定したことで,
戦争を外交の一手段として考えようとする空気を
未然に封殺していたのではないかと思うのです。

前述の通り,憲法九条は,
防衛戦争まで禁じているようにしか読めませんので,
本来妥当とは言えない条文です。

しかし,終戦直後の日本で,
軍国主義の考え方から抜け出せず,
好戦的な人も多く残る環境下では,
戦争を完全否定する風潮を
作り出す必要があったのでしょう。

今の日本はもう全然違う

しかし,第二次大戦が終結してから80年弱。

当時の軍国主義に染まった日本人など,
現代の日本にはほとんど残っていません。

実際に日本は,この間平和主義を貫き続け,
一切と言ってよいほど戦争に関わりませんでした。

国際社会からも,日本の平和主義に対して,
信頼は十分に得られたに違いありません。🛎️ 日本を毛嫌いする近隣諸国は別として。

こうなると,極端な平和主義の憲法九条は,
制定当時の必要性がほぼ失われています

かつ,防衛戦争まで禁止してしまっているという
バランスの悪さと危うさだけが残ったように
感じられるのです。

つまり,日本国憲法の第九条は,

戦後しばらくは必要だったけれども,
その後時代に合わなくなった

と考えるのが妥当だと思います。

最初から憲法九条に問題があったのではありません。

憲法九条が時代に合わなくなっても
変えない日本人にこそ,
問題があるのだと思います。

早く時代に合わせないと手遅れになる

近年,よく知られるように,
東アジア情勢が急速に緊迫しています。

時代とのずれが大きくなってしまった憲法九条を
早く改正して時代に合わせないと,
手遅れになりかねません。

現代の日本が,極端な平和主義と
戦争の無条件拒絶を謳う憲法九条を撤回しても,
軍国主義に回帰して他国の侵略を始めるとは
到底思えません。

国際社会からも,
日本がそのように思ってもらえるくらいの信頼は
得られていると思います。🛎️ 日本がバランスを取り戻すことを
不都合だと考える近隣諸国は別として。

既に述べた通り,戦後しばらくの間,
憲法九条が日本の軍国主義への回帰を防ぐ
一助になった可能性は高いと思います。

その憲法九条に感謝を示しつつも,
時代に合わなくなってしまったこの条項を
速やかに是正する必要があると考えています。

話し合いだけで解決の方針は,
仮に可能でも国民が安心できない

戦争や制裁合戦の前に話し合い。
それはもちろんそうです。

しかし,軍事力を放棄して,
何があろうと話し合いだけで
全てを解決するという方針は,
可能かもしれませんが綱渡りすぎるでしょう。

それが可能である可能性は否定しません。

フィクション作品で,ハイレベルな頭脳戦が
描かれることがありますよね。

わずかな手がかりから相手の心を深く正確に読んだり,
言葉巧みに相手の行動を誘導したり。

そのレベルの神算鬼謀を繰り出し続けられるなら,
上記の方針で国を守り続けることも,
あるいは可能かもしれません。

でも無理でしょう?

そんな無理難題を実在の人間に要求してはいけません。🛎️ 日本の政府や省庁に
期待していないとかではなく,
人間には無理だと思います。

それに,この綱渡りは,
自国さえ対応を間違えなければ
渡り切れるというものではありません。

敵対国が,国益を優先して道義を軽視し,
理不尽な揺さぶりをかけてくることも大いにあります。

ロープを揺らされて,突風を吹き付けられて,
それでもなお危なげなく渡り切れるか,という話です。

可能だと思いますか?

その可能性に自国民の安全を託せますか?

絶対不可能とは言いませんが,
失敗したら国の滅亡もありますよ?

日本は今まで,よく無事だったなと思ってしまいます。

ちなみに,可能であっても駄目です。

仮に可能であったとしても,
多くの国民は不安を拭えませんから。

国の政府として,その選択肢はありえません。

最悪,戦争になっても,
自分が,自国民が,そして自国が
生き残るチャンスはある。

国民がせめてその程度には安心できるように,
軍事力を高めることは必須であると
判断せざるをえないでしょう。🛎️ 特に,現在の東アジア情勢を念頭に置くと,
残念ながら,このような結論になります。

極端を嫌うあまり,逆の極端に走ってはいけない

日本国内には,かなりの割合で護憲派がいます。

その主張は主に,平和憲法(特に第九条)の堅持でしょう。

日本の戦前の軍国主義を忌避するのは
大いに理解できます。

ただ,日本国憲法の第九条は,
軍国主義という極端を回避するために,
逆の極端に走った代物です。🛎️ 前述の通り,それが戦後しばらく,
日本の軍国主義への回帰を
防いでくれていた可能性はありますが,
現代の日本にその危険性はないと思います。

本来は,2つの極端の間に,
適正な位置があるはずです。

その位置を実現するのが,
政治のあるべき姿でしょう。

2つの極端を比較すると軍国主義の方が怖いから,
適正な位置よりは平和主義に近い位置を狙う,
くらいは構いません。

しかし,現状の極端な平和主義では,
現在の物騒な東アジア情勢を見るに,
日本を守るのは非常に難しそうです。

筆者だって気の進まない話ですが,
話し合いだけで解決できない場合に備えて,
憲法改正や軍事力増強は必須と言うしかないでしょう。

遠い将来に備えて,ではない

最近まで平和ボケしていた筆者が言うのも
おこがましいですが,
ここまでで述べた危機意識は,
「将来起こるかもしれない戦争に備えて」といった
漠然としたものではありません。

台湾への武力侵攻の可能性を排除しないと
口に出して言っている国が隣にあるのですから。

日本は台湾にあまりにも近いので,
日本は巻き込まれないようにするという
方針自体に無理があるでしょう。

それに,台湾は,日本の近隣において,
極めて貴重な親日の地域です。

助けず見捨てるなんて考えたくないです。🛎️ 自分が戦うわけじゃないから
言えるんでしょ,と言われたら
返す言葉もないですが…

しかも,ウクライナ支援で
武器弾薬の在庫が枯渇している西側諸国とは異なり,
中国は自国の戦力を温存できているはずです。

台湾に味方すると目されるアメリカの戦力が
最も低下したタイミングで台湾侵攻開始なんてことも,
少なくとも念頭にはありそうな気がします。

台湾侵攻が危ぶまれるタイミング

仮に,台湾侵攻を行うための中国側の準備が
既にある程度整っているなら,
ウクライナ戦争の終結間際は,
台湾有事開始の可能性がかなり高い時期になるのでは,
と懸念しています。

アメリカの武器弾薬の在庫が,
最も減る時期だと思われるからです。🛎️ ウクライナ戦争終結間際でなくても,
中国が「これ以上待つ必要はない」と考えて
開戦するおそれはあります。

中国から見ると,ウクライナ戦争が終結した後は,
アメリカの武器弾薬の在庫が急速に回復し,
台湾侵攻が難しくなっていきます。

従って,ウクライナ戦争の終結前後は,
中国にとって,この機を逃してはならないという誘惑に
最も駆られる時期になるのではないかと考えています。

日本はこれまで,軍事力増強を
怠りすぎていたと聞いています。🛎️ そこに力を割かなかったからこそ
高度経済成長を実現できたのかも,
とは思うのですが。

個人的な印象では,もはやちょっと手遅れ気味なのですが,
間に合う可能性にかけて準備するしかないでしょう。

主権国家として常識的な条文に改正すればOK

ではどのように憲法九条の条文を改正するかですが,
筆者には特に案はありません。

他国の条文を参考にして,
主権国家として常識的な条文になれば
それでよいです。

隣国からのクレームは無視

日本で九条を含む憲法改正の動きが出ると,
中国,ロシア,北朝鮮あたりから,

再び軍国主義へと歩み出す愚を犯すべきではない

とか,キリッとした顔で言ってきそうですよね。

もちろん,無視でよいです。

皆様ご存知の通り,それらのクレームは,
正義感から発せられるものではなく,
日本が軍事的に弱い方が
好都合だから出てくるものです。

強いて返答するなら,

あなたの国の憲法で,
従来の日本国憲法第九条と
同様の条文が制定されたら話を聞きます

という感じでどうでしょうか。

国民投票の対象は,できれば単独で

アンケート企画の常識

憲法改正には国民投票が必要ですが,
アンケートの悪例にならないように
お願いしたいと思います。

一般に,アンケートの企画者が控えるべきことは
いくつかあるとされていますが,その中に,

2つ以上の事柄をまとめて質問し,
一括して答えさせる

というものがあります。

例えば,次のような質問です。

あなたは学生時代,地理と歴史は得意でしたか?
次のどれかを◯で囲んでください。

得意だった・どちらでもない・苦手だった

これでは,地理と歴史で答えが異なる人は
困ってしまいます。

もちろん,地理と歴史について,
別々に答えさせるのが正しい対応です。

国民投票でも,多くの要素を混ぜないでほしい

国民投票でも同様です。

この機会にと,日本国憲法の色々な箇所を
同時に改正した案を提示して,

改正案と現行憲法のどちらが良いと思いますか?
次のいずれかを◯で囲んでください。

改正案・現行憲法

みたいなのは最悪です。

手間はかかりますが,
複数箇所を争点にしたいなら,
別々に問うのが妥当でしょう。🛎️ ちなみに,選挙って,
同じ意味で最悪の制度ですよね。
こちらは仕方ないと思いますけれど…

護憲派の駆け引きに注意

いざ憲法改正の国民投票を行うとなった場合,
護憲派の人達による駆け引きに注意が必要です。

例えば,護憲派の人は,
改正案を多数用意するように
仕向けてくるかもしれません。

多数の改正案と「現行憲法」を選択肢として,
その中から各国民に1つを選ばせ,
最も多くの票を得た選択肢を採用するという
ルールにするわけです。

そうすれば,憲法改正派の票が割れ
「現行憲法」という結果が
実現しやすくなりますから。

この手の話は筆者などに言われなくても
大丈夫だと思いますが,
せっかく気付いたので念のため。

まとめ

改めて,この記事の主張を以下に示します。

この記事で主張したこと
  • 極端な平和主義を謳う日本国憲法第九条は,
    終戦直後の時期には必要だったかもしれないが,
    時代に合わなくなってしまった
  • 現在の憲法九条は,
    防衛戦争まで禁止しているようにしか読めない
    侵略戦争は不可,防衛戦争は大いに可と
    はっきり読める条文に改定する必要がある。
  • 護憲派の主張は,
    軍国主義という極端を避けるために,
    逆の極端に走っている状態である。
  • 全てを話し合いで解決する方針は,
    可能かもしれないが綱渡りすぎる🛎️ しかも,自分たちが対応を誤らなければ
    渡り切れるものでもありません。
    敵対国によって揺さぶられるおそれが
    あるためです。
    🛎️ 極端な平和主義のまま綱から落ちれば,
    国の滅亡か他国の属国化です。
    さすがに,その方針に国民の命を預けるのは
    無理がありすぎると思います。
  • 憲法九条を改正すると,
    日本に敵対的な周辺国が
    「日本が再び軍国主義に」などと
    騒ぎ出すと思われるが,無視でよい。🛎️ 「あなたの国の憲法で,
     従来の日本国憲法第九条のような
     条項を制定したら,話を聞きます」
    と言えば反論もないはず。

読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。

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筆者について


「累積黒字の考え方」と題する
経済学試論の創始者。
並びに,上記試論を紹介するサイト
世界経済蘇生秘鑰>の創設者。

既存の経済学に
非常に詳しいわけではなく,
大学教養課程レベルの
マクロ・ミクロ経済学を
ひと通り学んだ程度と自己評価。

しかし,従来の経済学に
どっぷり浸かっていなかったからこそ,
従来の経済学と全く視点の異なる
上記試論が出てきたのではないかと
思っている。

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