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- 2023/07下旬 初稿公開 🛎️ ウクライナ戦争まっただ中。
ウクライナ側の勢力による
ロシア領攻撃の事案が発生
2023年 5 月下旬から 6 月上旬にかけて,
ウクライナ側の勢力によるロシア領攻撃と見られる動きが
2つ報じられました。
- 2023年 5 月23日頃,
親ウクライナのロシア人部隊が,
ウクライナ・ロシア間の国境を超えて
ロシア領に侵入,攻撃した。 - 2023年 6 月 1 日頃,
20機以上の攻撃用ドローンが
モスクワ上空に飛来した。
この記事では,
これらの攻撃にウクライナ軍が関わっていたとして,
外から戦争を見守っている我々が
この攻撃をどう捉えるべきかを考えたいと思います。
結論を先に知りたい方へ
この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。
この記事で主張すること
- ウクライナ軍はロシア領を攻撃してもよい。
- ロシア軍はウクライナ領に攻撃してきているのに,
ウクライナ軍がロシア領への攻撃を禁じられたら,
単純に戦術的に不利。
この非対称性を押し付けられたら,
ウクライナが我慢ならないのは当たり前。 - 世論の重要性はこのようなところに現れる。🛎️
ウクライナ軍の越境攻撃を見て,
大半の人がこれは正当だと即断できる世論であれば,
越境攻撃によって軍事支援が鈍るかもといった論調は
出てこないはずです。 - ウクライナ軍は,越境攻撃に限らずだが,
民間人を標的にすることは断じて避けるべき。
ただし,民間人に被害が出るかもしれないからと言って
軍事目標の攻撃まで控える必要はない。🛎️ GPS誘導爆弾や自爆型ドローンは,
電子戦装置で狙いを狂わせることができると
聞いています。
だとすれば,それによって民間施設に
爆弾が当たる可能性はありますが,
それを恐れていたら攻撃そのものができません。 - ロシア側からの報復の激化を
心配する必要はないと思う。🛎️ ロシアはウクライナに対し,
報復とか関係なく,
できる限りの敵対行為を
既に実行していますので。 🛎️ 核の脅しについても,
脅しに屈することで確実に得をする要素は
ないと思います。
それでは,本論に入ります。
ウクライナはロシア領を攻撃してもよい
応報論によってロシア領を攻撃するのは危うい
結論から言いますと,
ウクライナ軍がロシア領を攻撃するのは
妥当であると思います。
ただし,その理由は,
ロシア軍は非道の限りを尽くしているのだから,
攻撃されても文句は言えない
のような応報論ではありません。
ウクライナ側の軍勢がそのような理由で
ロシア領を攻撃するのであれば,
気持ちは分かるが抑えてほしいと思います。
冒頭で述べたモスクワ上空のドローン攻撃に先立って,
ウクライナの高官が報復を匂わせていたようですが,
それは良くなかったかもしれないとは思いました。
それでも,抑制の利いた攻撃であればよいのですが,
応報論を振りかざして,
ロシア軍がブチャで行ったようなことを
ロシア領民に対して始めたりしたら,
ウクライナ側もロシアと何ら変わらないと思われても
仕方がありません。
国際世論が変化して軍事支援が得られなくなれば,
ウクライナは負けます。
「目には目を」の感情で報復することには
死活的なリスクがあることを,
ウクライナ側は意識し続ける必要があります。
ロシア領攻撃を禁止すると,ロシア軍が不当に有利
ウクライナ側の軍勢がロシア領を攻撃してもよいと
筆者が考える理由は,
ウクライナ側だけ越境攻撃を禁止すると,
軍事的に不利だと思うからです。
もしも,ウクライナ側はロシア領を攻撃してはならず,
実際に攻撃する可能性がないとすると,
ロシア軍にとってロシア領は
安全圏ということになります。
ウクライナ軍にとってウクライナ領は,
もちろん安全圏ではありません。
その非対称性がウクライナ軍にとって
到底承服できないのは当然でしょう。
素人考えですが,ちょっと思案しただけでも,
次のような戦術的影響が出てきます。
- ロシア軍は,国境を越えてウクライナ領を
地上部隊で攻撃してから撤退する際に,
ロシア領に逃げ込んでしまえばもう大丈夫。
ウクライナ軍地上部隊はそれ以上追撃できない。 - ロシア軍は,ロシア領内でありさえすれば,
比較的無防備に軍勢や砲兵,兵站基地を配置できる。 - ロシア軍は,ウクライナとの国境から遠いロシア領地に
防空システムを配備する必要がない。
そんな馬鹿な話がありますか。
このようなロシア軍の不当な優位性を打ち消すために,
ウクライナ軍はロシア領を攻撃する必要があります。
日本の報道番組を見ていても,
この視点がほとんど出てこないのが不思議です。
決定的な穴でもあるのでしょうか?
民間人の巻き添えをどう見るか
民間人の巻き添えを確実に避けるなら,
攻撃しないしかありません。
最近は,GPS誘導の精密誘導爆弾や,
自爆型ドローンの狙いを,
電子戦装置で逸らすことができると聞きました。
狙いが逸れたら,確かに,
民間人の住居に突っ込むかもしれません。
仮に空中で自爆しても,
飛び散った破片で民間人に被害が出るかもしれません。
しかし,それを恐れていたら,
攻撃自体ができません。
民間人を狙うのはもちろん論外ですが,
軍事目標を攻撃した結果,
民間人に被害が出ることは,
ある程度は許容せざるをえないと思います。
ウクライナが西側諸国に約束すべきは,
ロシア領を攻撃しないことではない
前述の通り,ウクライナが自国領土防衛のために
ロシア領を攻撃することは,完全に正当です。
であるならば,ウクライナが西側諸国に
約束するべきことは,
ロシア領を攻撃しないことではありません。
代わりに,ウクライナは西側諸国に対して,
次のようなことを約束すればよいでしょう。
ウクライナが西側諸国に約束するべきこと
- ウクライナ側の軍勢がロシア領の一部を
一時的に占領することはあるかもしれないが,
戦争終結時には手放す。
国際社会に認められた
ウクライナ領以外の土地の領有権を
戦争終結後も主張することはない。 - ウクライナ側の軍勢は,民間人を標的にしない。
特に,民間人への虐待行為は決して容認しない。
これで十分に,国際社会に対して
「ウクライナはロシアとは違う」と
分かってもらえるでしょう。🛎️
これまでのロシアの行為が
あまりに酷いだけに,
理解してもらいやすいはずです。
そして,国際社会は,
上記の約束に違反しないことを条件に,
ウクライナに対し,ロシア領への越境攻撃を
快く認めるべきだと思います。
ロシアによる報復を懸念する必要はない
表立って報じられているところでは,
アメリカは,ウクライナ側に対し,
ロシア領土内への攻撃を,
少なくとも推奨はしていないらしいですね。🛎️
2024/08下旬追記:
ウクライナ軍による
ロシア領クルスク州への越境攻撃には,
アメリカも理解を示すようになっています。
好ましい変化だと思います。
戦争のエスカレーションが怖いからですよね。
しかしですね,
戦争のエスカレーションと言っても,
これ以上何があります?
ウクライナ側によるロシア領への攻撃で,
戦火が第三国に飛び火すると考える理由はないでしょう。
懸念されるとすれば,
それに対するウクライナへの報復ですが,
気にする必要はないと思います。
ロシアは既に,ウクライナに対し,
思いつく限りの非人道行為を
既に実行しています。
報復など関係なく,
ロシア側が得をすると思ったら
実行する方針であることは明らかです。
ロシアがこれ以上何かしようと思っても,
もうできることがそれほど残っていないと思いますし,
何か思いついたら,報復とか関係なく実行するはずです。
そう考えると,ロシアからの報復を怖れて
ウクライナ側が越境攻撃を控える理由は
ないのではないでしょうか。
核が使われるリスクの上昇を
懸念する声もあると思いますが,
筆者は否定的です。
核の脅しに屈することは,
確実なデメリットがある一方,
確実なメリットはないと思っているからです。
詳しくは,次の記事を
ご覧いただければと思います。
参考記事:
ロシアの核の脅しにどの程度屈するべきか
まとめ
改めて,この記事の主張を以下に示します。
この記事で主張したこと
- ウクライナ軍はロシア領を攻撃してもよい。
- ロシア軍はウクライナ領に攻撃してきているのに,
ウクライナ軍がロシア領への攻撃を禁じられたら,
単純に戦術的に不利。
この非対称性を押し付けられたら,
ウクライナが我慢ならないのは当たり前。 - 世論の重要性はこのようなところに現れる。🛎️
ウクライナ軍の越境攻撃を見て,
大半の人がこれは正当だと即断できる世論であれば,
越境攻撃によって軍事支援が鈍るかもといった論調は
出てこないはずです。 - ウクライナ軍は,越境攻撃に限らずだが,
民間人を標的にすることは断じて避けるべき。
ただし,民間人に被害が出るかもしれないからと言って
軍事目標の攻撃まで控える必要はない。🛎️ GPS誘導爆弾や自爆型ドローンは,
電子戦装置で狙いを狂わせることができると
聞いています。
だとすれば,それによって民間施設に
爆弾が当たる可能性はありますが,
それを恐れていたら攻撃そのものができません。 - ロシア側からの報復の激化を
心配する必要はないと思う。🛎️ ロシアはウクライナに対し,
報復とか関係なく,
できる限りの敵対行為を
既に実行していますので。 🛎️ 核の脅しについても,
脅しに屈することで確実に得をする要素は
ないと思います。
読者様の思考の助けになれば幸いです。