記事情報 🛎️
独創性・確信度・効力は
自己評価です。
- 記事の状態: 有効(2024/08下旬時点)
- 所属カテゴリー:
【国防・軍事】
記事一覧 - 独創性: ★★★
確信度: ★
効力 : ★
- 参考記事:
執筆時期・更新履歴 🛎️
更新履歴は,
重要だと思う変更のみ
記します。
- 2023/08中旬 正式版公開
🛎️
タイトル変更および
些細な加筆修正を行いましたが,
暫定版から主張に変更はありません。 - 2023/08上旬 暫定版公開
🛎️
ウクライナ戦争まっただ中。
広島と長崎の原爆記念日前後。
核廃絶って,実現しても大丈夫?
核の緊張がこれほど高まっている時期もない
2022年 2 月にロシアがウクライナ全面侵攻を始めて以来,
ロシアは同時に核の脅しを続けています。
これまでにも,核の緊張が高まった時期はありましたが,
これほど長く,核の緊張が高い水準で維持されたことは
さすがにないのではないでしょうか。
そんな中,今年も8月がやってきました。
広島と長崎に原爆が投下された月です。
多くの人が,核軍縮や核廃絶への思いを
新たにすることでしょう。
本来,「核廃絶」という言葉が
原子力発電所のような核技術まで
含むのかは分かりませんが,
この記事では「核兵器廃絶」と同義とします。
核廃絶を実現した後のことも考える必要がある
ただ,ちょっと思うところもあるのです。
核廃絶って,実現してしまっても
大丈夫なものなのだろうかと。
すなわち,核兵器が廃絶された後,
その状態を維持できるのだろうかと
思ってしまうのです。
核廃絶を実現した後の時代で,
周辺国に対してやたら敵対的な外交を
展開する国が出てきたと思ったら,
我々は既に核兵器を持っている
と言い出した…なんて,大いにありそうな話ではないですか。
そう考えると,
何の策もなく核兵器を廃絶したら,
むしろ危ないかもしれないとさえ思うのです。
そこで,この記事では,
核廃絶を実現しても大丈夫と思われる条件について
考えてみたいと思います。
先に申しておきますと,
「現時点では核廃絶の条件は整っていない」
という結論になるのですが,
未来の技術革新に対する期待も含めて考察し,
やや奇抜な案を紹介しています。
しかし,その案の当否はそれほど重要ではありません。
核廃絶を目指すのであれば,
核廃絶が実現した後のことをテクニカルに考える必要も
あるのではないかと問題提起するための記事です。
この記事の主張を先に知りたい方へ
この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。
この記事で主張すること
- 核廃絶された状態を維持するのは極めて難しい。
- 無策のまま核廃絶を実現するのは危険である。
実現したければ,核廃絶された状態を
安定して維持できる手法を確立する必要がある。 - 核兵器の特徴は,桁違いの破壊力と放射能汚染。
このうち,より人類滅亡の原因になりそうなのは,
放射能汚染だと思われる。 - 核抑止のために放射能汚染は不要である。🛎️ 破壊力だけで十分。
- 核廃絶の実現には,
核兵器ほどではなくとも大規模な破壊能力を持ち,
かつ広域に及ぶ環境破壊を伴わない兵器の開発が
必要かもしれない。🛎️ このような兵器が実用化されれば,
誰にとっても核兵器は
無用の長物になるはずです。 🛎️ 放射能汚染のような広域の環境破壊がないため,
人類を滅亡に導く危険性も,
核兵器に比べれば極めて低いと思います。
それでは,本論に入ります。
なぜ,核廃絶をしたいのか
では,多くの人の考えが一致している部分の確認から
始めていきたいと思います。
まず,核兵器の特徴を確認しましょう。
核兵器の特徴
- 桁違いの破壊力
- 放射能汚染
よく知られている通り,この2つですね。
次に,なぜ核廃絶をしたいのか。
語弊を恐れず単純化するなら,
人類の滅亡を回避するためでしょう。
滅亡さえ防げればよいわけではないとしても,
人が核兵器を極度に怖れ,廃絶論まで持ち出す理由は,
やはり人類滅亡に繋がりかねないからだと思います。🛎️
人類滅亡までは至らなくとも,
広域・長期間に渡って
人が住めなくなるという要素が
大きいのでしょう。
化学兵器や生物兵器も非人道兵器ですが,
廃絶論は核兵器ほど活発ではない印象があります。
それはおそらく,化学兵器や生物兵器では,
人類が滅亡を意識するほど
広域・長期間に渡って影響が残る可能性が
低いからではないでしょうか。
そして1つ,この記事の後半で
キーポイントになることを早めに指摘しておきます。
それは,
核兵器の2つの特徴のうち,
人類滅亡の原因になりそうなのは,
放射能汚染の方である
ということです。
核兵器の破壊力がいかに凄まじいと言っても,
地球上のあらゆる場所を攻撃して,
地下シェルターに避難した人まで含めて
ほぼ全員殺害するのは不可能に近い気がします。
核戦争で人類が滅亡の危機に瀕するとしたら,
やはり広域の放射能汚染によって
地球が人間の住めない星に
なるためではないかと思うのです。
これらのことを念頭に置いて,
核廃絶を実現しても大丈夫だと言えるための条件について
考えてみたいと思います。
核廃絶実現への道筋
記事冒頭で述べた通り,
核廃絶が実現してしまった世界では,
誰かが核兵器を極秘開発した場合に
誰も抑止力を持っていないということに
なりかねません。
核廃絶を実現するなら,
核兵器が廃絶された状態を
維持するための手段が必要になります。
その手段の方向性を,
今後の技術革新にも期待しつつ挙げるなら,
次のようになるでしょうか。
核廃絶された状態を維持するために必要なこと
- 完璧な防御システムを開発する。
- 核兵器の極秘開発を確実に防げるようにする。
- 核兵器を核兵器以外の武器で抑止できるようにする。
他にもあるかもしれませんが,
筆者が思いついたのはこの3つです。
完璧な防御システムによる抑止は極めて難しい
まず, 完璧な防御システムを構築し,
核兵器を無効化してしまうという方針について
考えてみます。
防御システムによって核攻撃が不可能になれば,
核抑止力としての核兵器も不要になり,
核廃絶の道が開けるという考え方です。
しかし,この方針は難しいと思います。
筆者は軍事に詳しくないですが,
軍事の専門家に問えば,
おそらく完璧な防御システムなんて
ありえないと言うでしょう。
また仮に,一度は完璧と思われる
防御システムを開発しても,
攻撃する側はその防御システムの無効化を画策します。🛎️
現在でも常に
行われていることです。
防御システムが無効化され,
かつ同システムを採用している国が
核兵器を放棄していた場合,
その国は核兵器に対して無防備になってしまいます。
その無防備な状態は,防御システムが改修されて
再び完璧になるまでの間続きます。
つまり,核攻撃に対して無防備な期間が,
防御システムが無効化されるたびに
発生してしまうのです。
しかも,核ミサイル攻撃とその迎撃では,
基本的に後者の方が難易度がはるかに高いはずですので,
防御システムを再び完璧にすることが
もはや不可能ということもありえます。
それ以前に,防御システムが
本当に無効化されていないかどうかを
知ることすら不可能です。
どこかの誰かが無効化の手段を開発しても,
防御システムの保有者はそれを知りえませんから。🛎️
この場合,実際に使われた時に
初めて気づくのではないでしょうか。
無効化されていることに気づいた時には
核攻撃が成功しているわけですから,
既に手遅れです。
要するに,完璧な防御システムを開発したからもう大丈夫とは,
決してならないということです。
もちろん,高性能な防御システムを開発することは,
守るに易く攻めるに難い国を作る上で非常に重要です。
ただ,それは核廃絶の一助にはなっても
決定打にはならないと思います。
核兵器の極秘開発を確実に防ぐ方針はほぼ不可能
考えられる具体策は2つ
次に,核兵器の極秘開発を防ぐ方針について考えます。
核兵器の極秘開発が不可能になれば,
核廃絶された世界においても,
どこかの国が密かに核兵器を開発して
核の脅しをかけてくる心配はなくなるという考え方です。
しかしこれは,防御システム以上に
不可能に近いと言わざるをえません。
この方針における具体的方策は,
筆者が思いつく限りでは次の2つです。
- 核兵器の技術を封印する。
- 核兵器の極秘開発を
遠隔地から検知する技術を開発する。
それぞれ,軽く検討してみます。
今さら核技術を封印しても遅い
核兵器は,一度は実現されてしまった技術です。
今さら核技術を封印しようとしても,
基礎理論,関連技術の資料がそこかしこに残るでしょう。
たとえ,核兵器製造に寄与する資料が
何一つ手に入らないとしても,
実現可能であることは分かっています。
これは,核兵器を作りたい者からすると,
大きなアドバンテージです。
一度生み出されてしまった技術は,
仮にそれを封印したとしても,
今後誰も同じ物を生み出せないなんてことは,
まず期待できません。🛎️
その間にも科学技術全般は
進歩し続けるのですから,
なおさらです。
核兵器の極秘開発を
遠隔地で検知する技術があればどうか
となると,核兵器の極秘開発を防ぐには,
核開発,核実験等を遠隔地から検知する技術を開発し,
全世界を監視する機構が必要になるでしょう。🛎️
現時点で最も有力なのは,
地下核実験によって発生する地震を
検出する方向でしょうか。
しかし,もっと確実性の高い判断材料が
欲しいところです。
そして実際に核開発等の兆候が検知されたら,
当該国に立入検査を要請したりするわけです。
しかし,実効性の確保は難しいでしょうね。
高精度な検知技術の開発自体が極めて難しそうですし,
仮に開発できたとしても,
隠蔽する技術の開発も進み,
いたちごっこになる可能性が高いです。
しかも,遠隔検知と隠蔽では
一般的に隠蔽の方が簡単だと思われるため,
隠蔽側に有利ないたちごっこになることが
容易に予想されます。
実際,北朝鮮はもう核兵器を持っていて
使えるというのが通説になりつつありますが,
いつどこで開発されたかは分かっていないはずです。
それでも期待はしますけれども,
遠隔検知技術によって核兵器の極秘開発を防ぐ方針は,
よほどの技術革新が必要になると思います。
核攻撃に対する報復手段の要件
核兵器の放射能汚染の必要性
ではもう1つ,核兵器を核兵器以外の武器で
抑止できるようにするという方針はどうでしょうか。
筆者も,多くの論評と同じく,
核兵器で攻撃された時に報復できる能力は,
少なくとも現時点では必要だと考えています。
ただ,核兵器に対する報復手段が
核兵器である必要があるかは,
議論の余地があると思います。
それを考えるにあたり,
1つ提示したい疑問があります。
核兵器の放射能汚染って,
誰かにとって必要なのか?
ということです。
核兵器の使用者にとって必要なのは破壊力のみ
核兵器の特徴は
「桁違いの破壊力」と「放射能汚染」の
2つだと述べましたが,
核兵器で何かを攻撃するにあたり,
必要になるのは破壊力だけでしょう。
破壊はしたくとも,
汚染はしたくないケースが多いはずです。
例えば,他国の領土を占領するために核攻撃を行ったら,
放射能汚染のせいで占領できなくなりますから。
核兵器を使う気がある国や人であっても,
放射能汚染という要素は
邪魔でしかないと思うのです。🛎️
放射能による非人道的な効果を狙う
人でなしでもなければ。
核抑止に必要なのも破壊力のみ
では,核抑止のために
核兵器を持つ国にとってはどうでしょうか。
核抑止のために持つ以上,
核攻撃されたら核で報復しなければなりません。
それは,必ずしも応報論的な報復ではなく,
次の核ミサイルを撃たれないように,
ミサイル基地や政権中枢などを
破壊するという意味もあります。
その際に,放射能汚染は必要かということです。
明らかに不要ですね。
破壊力だけで十分です。
むしろ,仮に破壊力だけの兵器があれば,
放射能汚染がない分だけ使いやすく,
核抑止力として機能しやすいとも言えます。
さらに言えば,核兵器の抑止力が,
核兵器と同等の破壊力を持つ必要もありません。
この兵器で攻撃されるのは絶対嫌だと
誰もが思う程度の破壊力があればよいはずです。
その意味では,核兵器はおそらく
オーバースペックだと思います。🛎️
もちろん,小型から大型まで色々あるので
一概には言えませんが。
そして,放射能汚染が余計です。
核兵器は,核抑止の手段として,
決してちょうどよい兵器ではありません。
つまり,本来,核兵器の抑止力が
核兵器である必要はないのです。
ただ,現時点では,核攻撃を抑止できるだけの
破壊力を有する兵器が核兵器だけだから,
やむなく核兵器を核抑止力に位置付けているだけです。
このように考えてくると,
一応の解決指針が1つ見えてきます。
広域の環境破壊を伴わない
大量破壊兵器が開発されれば,
核廃絶への道が拓ける
とんでもない見出しですが,
そういうことになるのです。
核戦争が起きた場合に
人類滅亡の原因になりそうなのは,
破壊力よりも放射能汚染。
攻撃するのに必要なのは
破壊力であって放射能汚染ではない。
核抑止に必要なのも,
破壊力であって放射能汚染ではない。
なら,放射能汚染のような
広域の環境破壊を伴わない大量破壊兵器があれば,
全ての人にとって核兵器は不要になります。
そして,そのような新型兵器による大戦争が起こっても,
広域に及ぶ環境破壊がないため,
人類滅亡には結びつきにくいと考えられます。
従って,核兵器の放棄と新型兵器の実用化を進め,
最終的に核廃絶に至れば,
それは一応意味があると言えるでしょう。
核廃絶への道はこれだけだなどとは言いませんが,
現時点での筆者の知恵では,
こんなひねくれた案しか思いつきませんでした。🛎️
いずれ思いついたら
加筆修正するかもしれません。
現時点では実現不可能な案ですし,
未来においても,それだけの破壊力を持ちながら
広域の環境破壊を伴わない兵器なんてものが
実現可能かどうかは疑わしいです。
ただ,核廃絶の具体的な道筋を見出すための
思考例として提示しておきたいと思います。
核攻撃に通常兵器で報復という方針もあるが
ウクライナ戦争におけるロシアに対しては,
ロシアが核兵器を使った場合に
核以外の通常戦力で報復するという
考え方もあると聞きます。
しかし,それでは核抑止力として不十分との認識が
根底にあることも間違いありません。
それは,破壊力が足りないのか,🛎️
全弾命中すれば十分な破壊力であっても,
何割か迎撃されたら全く不十分という
可能性も考えられます。
コストや在庫数の問題で現実的でないのか。
いずれにしても,
核抑止のために核兵器を持ちたくないなら,
新型兵器の開発は必要になると思います。
当面は核不拡散や核軍縮に注力した方が良い
核なき世界を目指すにあたり,
途中段階の道筋として
「核不拡散」や「核軍縮」があります。
筆者はこのあたりについて
一家言あるわけではないので詳しく触れませんが,
当面はその2つに注力するのが良いかと思います。
とは言え,日本の場合,核保有国である
ロシア,中国,北朝鮮に囲まれているので,
非核三原則をこのまま維持してよいかも微妙です。
この点について筆者は確たる結論に達していないので,
もし日本が,核保有なり核共有なりを行う方向に転換しても,
現時点では賛成も反対もできません。
一旦は核軍拡が必要!?
核軍縮を実現するためには
一旦は核軍拡が必要という,
筆者の案などよりはるかに逆説的な論理が
結構有力だと聞いた覚えがあります。
核戦力の不均衡がある場合,
戦力が少ない方の核兵器を増やすことで
核戦力の均衡を実現してはじめて,
話し合いにより双方の核戦力を
減らしていくことが可能になるという
話だったと思います。
確か,冷戦時代の米ソの間で,
その道筋を通って一度は核軍縮に成功したのだとか。
うろ覚えのでこれ以上述べませんが,
このような奇策にも見える手法が必要になるほどに,
核軍縮は難しいということなのでしょう。
ともかく,核廃絶を望むだけでは実現しませんし,
何も考えず核廃絶を実現するのは危険でもあります。
結論としてありきたりですが,
知恵を出し合って具体的な道筋を見出し,
そのために必要な技術があるなら
それに向けて技術革新を進めるといった努力が
必要になるのでしょう。
まとめ
改めて,この記事の主張を以下に示します。
この記事で主張したこと
- 核廃絶された状態を維持するのは極めて難しい。
- 無策のまま核廃絶を実現するのは危険である。
実現したければ,核廃絶された状態を
安定して維持できる手法を確立する必要がある。 - 核兵器の特徴は,桁違いの破壊力と放射能汚染。
このうち,より人類滅亡の原因になりそうなのは,
放射能汚染だと思われる。 - 核抑止のために放射能汚染は不要である。🛎️ 破壊力だけで十分。
- 核廃絶の実現には,
核兵器ほどではなくとも大規模な破壊能力を持ち,
かつ広域に及ぶ環境破壊を伴わない兵器の開発が
必要かもしれない。🛎️ このような兵器が実用化されれば,
誰にとっても核兵器は
無用の長物になるはずです。 🛎️ 放射能汚染のような広域の環境破壊がないため,
人類を滅亡に導く危険性も,
核兵器に比べれば極めて低いと思います。
読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。