記事情報 🛎️
独創性・確信度・効力は
自己評価です。
執筆時期・更新履歴 🛎️
更新履歴は,
重要だと思う変更のみ
記します。
- 2024/08下旬
記事の状態を「大部分は無効」から「部分的に有効」に変更。
改めて読んでみると,
まだ通用する部分も多かったため。 - 2023/10下旬
記事の状態を「大部分は有効」から「大部分は無効」に変更。
記事が古くなったので。 - 2023/08上旬
見解を変更。🛎️ 以前は,8月下旬になっても
戦線が動かなければ,
今年中の大規模な領土奪還は
なさそうだと考えていました。
ウクライナ軍が泥濘期の直前期に
全てを懸けている可能性について追記。⏬ - 2023/08上旬
ウクライナ軍が無理をする価値が
あるかもしれない状況を追記。⏬ - 2023/07下旬 初稿公開
🛎️
ウクライナによる反転攻勢が始まって,
1か月半程度が経過。
素人として,どこに着目するべきか
2022年 2 月に始まった
ロシアによるウクライナへの全面侵攻は,
ウクライナが厳しい冬を乗り切って,
奪われた領土を奪還する「反転攻勢」のフェーズに
入っています。
ただ,反転攻勢が始まって1か月半経った今でも,
領土奪還が大きく進んだ感はありません。🛎️
ウクライナ軍の目標が
骨を断つことであるとするなら,
現状は,皮膚を少し傷付けた程度でしょう。
今のところ,肉にも達していない印象です。
この現状については,
専門家の間でも意見が分かれています。
ウクライナ側から見て苦戦である,
失敗しつつあるという意見が
強まりつつあります。
一方,ロシア軍の後方地域を叩き続けると同時に,
前線ではロシア軍に無理な防衛を強いているので,
まだまだこれからという意見もあります。
専門家の間でも意見が分かれる状況で,
筆者のような素人が
自分で生情報を精査したりしても,
大した成果は得られないでしょう。
この記事では,細かい戦況は知りようがない中で,
素人として大局をどう概観するか,
どこに注目するとよいかを考えました。🛎️
長大な記事で恐縮ですが,
興味ある方はぜひ。
結論を先に知りたい方へ
この記事の主張を先に確認したい方は,
次の開閉ボックスを開いてください。
この記事で主張すること
- ウクライナ軍は,
反転攻勢を始めてから1週間ほどで,
領土奪還重視の戦い方から持久戦に
切り替えたと思われる。🛎️ 反転攻勢の開始日は,
2023年 6 月 6 日頃と認識しています。 - (筆者も含めて)素人目線では,
ウクライナの領土奪還が進むかどうかに
注目していればよい。🛎️ 大規模な領土奪還以外の情報は,
大規模な領土奪還に繋がらなければ
無意味くらいの感覚で。 - 現時点(7月下旬)で領土奪還が進んでいないから
反転攻勢失敗と判断するのはまだ早い。🛎️ ロシア軍が陣地を防衛するのに
どの程度無理をしているかが不明なので。 - ウクライナ軍がこのまま攻撃を続けるなら,
秋の泥濘期が始まる前に
かなりの面積の領土を奪還する必要はある。🛎️ あくまで,攻撃を続けるならの話です。
今年は領土奪還のための攻撃を
やめるという選択肢もあります。
- ウクライナ軍が本格的に攻めてみた結果,
ロシア軍が頑強に抵抗できることが
初めて分かった。
このことを意識すると,より推察が深まるはず。🛎️ 世間ではこの点が
軽視されている気がします。 - ウクライナ側は,今年はこれ以上反転攻勢を
続けないという選択肢もある。🛎️ 来年になれば西側からの戦闘機供与が進み,
今年より有利に戦えると思われるので。 🛎️ ウクライナ軍が一度本格的に攻めてみて,
ロシア軍が簡単に瓦解しなかったことで,
西側諸国の理解は得られやすくなっているはずです。
- 今後しばらくは,
ウクライナ軍側の旧ソ連製戦車が
どのような戦況で本格投入されるかに
注目したい。🛎️ 現在それらは後方に控え,
乗員の生命保持能力が圧倒的に高い西側戦車を
先に出していると聞いています。 - ウクライナ軍が南部ザポリージャの戦線に
旧ソ連製戦車を多数投入して攻撃を続けても
戦線が動かないようなら,
ウクライナ軍にとってかなりまずい状況。
そうなるくらいなら,潔く越年でよいと思う。
それでは,本論に入ります。
反転攻勢の成否の鍵になると思われた要素
ウクライナは,まだロシア軍の防御陣地を
本格的に攻め破ったことがない
今回のウクライナ戦争で,
ウクライナが一定の領土奪還を果たしたフェーズが,
大きく分けて2回ありました。🛎️
開戦直後のキーウ周辺は,
ロシア軍支配地域が流動的でしたが,
その地域からロシア軍が
撤退した後の時期について考えています。
1回目は,2022年 9 月~10月の
東部ハルキウ奪還。
2回目は,2022年11月の南部ヘルソン市奪還です。
しかし,どちらのフェーズにおいても,
ウクライナ軍は,
ロシア軍が本格的に構築した陣地を
突破したわけではないと認識しています。
ハルキウの方は,ウクライナ軍による
ヘルソン州での陽動作戦にロシア軍が引っかかり,
ハルキウ州の防備がかなり手薄になっていたというのは
有名な話です。🛎️
ウクライナ軍としては
見事な作戦でしたけど。
それ以前に,ロシア側が
攻撃と領土奪取にばかり目を向けて,
後方の防御陣地の構築を怠っていた感も否めません。
一方,ヘルソン市奪還の頃には,
ロシア軍も躍起になって防御陣地を
構築するようになっていました。
しかし,ウクライナ軍がヘルソン市を奪還できたのは,
ロシア軍の防御陣地を攻め破ったからではなく,
補給を断ってロシア軍を撤退に追いやることに
成功したからでしょう。🛎️
ヘルソン市を支配している頃のロシア軍は,
ドニプロ川を渡って補給を行う必要があったため,
ウクライナ軍としては,橋を落とすなどにより,
ロシア軍の補給を断ちやすかったと言われています。
つまり,ウクライナ軍は,ロシア軍の陣地を
本格的に攻め破ったことがまだないと
思われるわけです。
その事実がロシア側の希望になっていることは
間違いないと思っています。
ウクライナ軍は,反転攻勢でどこを攻めるにしろ,
ロシア軍が防御陣地を作って待ち構えている所に
攻め込まざるをえないであろうことは,
多くの人が予想していた通りです。
ウクライナ軍は,まだ一度もなしえていないと思われる,
ロシア軍陣地の本格突破に挑んでいるわけです。
ロシア軍の防御陣地の構成要素は,
それほど種類は多くない
ロシア軍がこれまで必死に
構築してきた防御陣地ですが,
その構成要素の種類は,
それほど多くありません。
筆者が報道等で見る限り,
せいぜい「塹壕」「龍の歯」
「鉄条網」「地雷原」くらいでしょう。
種類が少ないということは,
対策と訓練がしやすいということでもあります。
当然,ウクライナ軍は,
それらをスムーズに突破するための訓練を
相当積んだに違いありません。
もしもウクライナ軍が,ロシア軍の想定をはるかに超えて
スムーズに防御陣地を突破できるようになっていれば,
昨年のハルキウ奪還の時ほどではなくとも,
ロシア軍の早期瓦解もありうるかと思っていました。
ウクライナは,ロシア軍の防衛線を突破する
マスターキーを持っていない
しかし,いざ反転攻勢が始まってみると,
ロシア軍の防御陣地は十分機能しているようです。
残念ながら,ウクライナ軍は,
ロシア軍の防御陣地をスムーズに突破する
マスターキーを持つには至りませんでした。
ウクライナ軍は早々に
戦い方を切り替えたと思われる
ロシア軍がどの程度抵抗するかは
予想が難しかった
反転攻勢を始める前のウクライナ軍にとって,
反転攻勢を始めた時のロシア軍の反応は
予想がしにくかったと思います。
普通に考えれば,
敵軍は徹底抗戦してくるに違いなく,
そうでないケースを想定する必要はありません。
しかし,東部バフムート等におけるロシア側軍勢の
滅茶苦茶な戦いを見ているだけに,
ロシア軍がまともな防御行動を取れず,
早期に瓦解してくれる可能性も
否定できなかったのではないでしょうか。
そこで,ウクライナ軍は,大まかに
次のような方針を立てたのではないかと思います。
- 開戦と同時に,強めの攻勢をかける。
- ロシア軍が早期に瓦解するなら,
さらに圧力を強めて領土奪還を進める。 - ロシア軍の防衛がしっかりしているようなら,
それに応じて作戦を見直していく。
ウクライナ軍はそのように考えて
反転攻勢を始めたのだろうと想像しています。
ロシア軍兵士損失数の推移から見えること
ウクライナ側は毎日,
前日1日分のロシア軍兵士の損失(おそらく死者数)を
発表しています。
それをある程度信用するとすると,
ウクライナ軍が早々に戦い方を切り替えたように
感じられました。
前述のロシア軍兵士の損失は,
反転攻勢開始前は400人台や
500人台の日が多かったのですが,
6月6日分の死者数が突然,
800人台に跳ね上がりました。
その日に反転攻勢が始まったと
解釈するのが妥当でしょう。
そして,その日を含めて6日間,
ロシア軍兵士の損失が非常に多い日が続きます。
しかしその後は,600人台かそれ以下と,
反転攻勢開始前よりはやや多い程度の日が続いて
現在(7月下旬)に至ります。🛎️
正確には,突発的に損失数が
跳ね上がる日もありましたが,
長続きしていません。
筆者は,この推移を,次のように解釈しています。
筆者の戦況解釈
ウクライナ軍は,最初の6日間は,
ロシア軍の早期瓦解も視野に入れて激しく攻めた。
しかしロシア軍は瓦解しなかったので,
長期戦を見据えた戦いにシフトした。
長期戦を見据えた戦いとは,
- 陣地突破を目的とする攻撃を減らし,
威力偵察寄りにシフトする。 - 自軍戦力の損耗低減を重視する。
- 敵軍戦力の損耗増大を重視する。
といったものです。
予想には幅があったことを忘れてない?
2023年 6 月後半あたりからだと思いますが,
ウクライナ軍による反転攻勢の進捗が遅いことを意識した
公式声明や解説が聞かれるようになりました。
◆ ウクライナ大統領 ◆
奪還のペースは望んでいたよりも遅い。
だが,一気に全土を奪還できるかのような,
過度の期待を持つべきではない。
◆ ウクライナ高官 ◆
敵も激しく抵抗してくることを理解するべきだ。
◆ 日本の解説者 ◆
- 予想よりも攻めあぐねている。
- ロシア軍が頑強に抵抗することは
分かっていたことだ。
どれもこれも,違和感のある主張です。
ちょっときつめの言い方をするなら,
嘘っぽいと感じるのです。
皆さん,そんなに幅のない予想をしていたのですか?
ロシア軍は簡単に瓦解するに違いないとか,
ロシア軍は頑強に抵抗するに違いないといった,
可能性の幅を限定した予想ができていたのですか?
多くの人は,ロシア軍がどう出てくるか,
どの程度粘れるのかは,
攻めてみなければ分からないと思っていたはずです。🛎️
ロシア軍の兵士に
戦う意志があるかどうかさえ,
疑う声がかなりあったくらいですから。
ウクライナ軍だってそうだったに違いありません。
攻めてみて初めて,
ロシア軍が頑強に抵抗してくることが
判明したというのが
実情に近いのではないでしょうか。
また,事前の予想では,反転攻勢の行方について,
ロシア軍が簡単に瓦解する可能性から,
ロシア軍が頑強に抵抗する可能性まで,
幅広い見方があったことを,
興味を持って情報を追っている人なら,
皆理解していたでしょう。
その「予想の幅」を無視して,
ウクライナ軍が苦労するのは
分かっていたことだ
みたいなことを言うから
嘘っぽくなるのだと思います。
事前の予想の幅を意識していれば,
例えば,次のような主張になるはずです。
◆ ウクライナ軍の公式声明として ◆
ロシア軍がどの程度抵抗できるのかについて,
反転攻勢を始める前に把握するのは困難であり,
ロシア軍の早期瓦解の可能性も何%かは期待していた。
しかし,数日間激しく攻めてみた結果,
残念ながらロシア軍の抵抗は頑強であった。
そこで我々は,領土奪還を急がず,
持久戦を見据えた戦い方に切り替えた。
◆ 専門家の解説として ◆
私は以前から,ウクライナ軍にとって
難しい作戦になると思っていた。
去年のハルキウ奪還のような快進撃を期待していた人も,
反転攻勢が始まってからの戦いを見て,
簡単でないことを理解しただろう。
このような主張ならしっくり来ますし,
その後の議論も深めやすいのではないでしょうか。
繰り返しになりますが,
ウクライナ軍が攻めてみて初めて,
ロシア軍が頑強に抵抗してくることが判明しました。
この記事の後半では,
その点を念頭に置いた推論がいくつか出てきますので
ご注目いただければと思います。
基本的には,領土奪還が進むかどうかに注目
大規模な領土奪還以外の情報は聞き流すのが吉
簡単には領土奪還が進まないとなると,
それ以外の情報から,
今後領土奪還が進みそうかどうかを
占いたくなります。
ウクライナ情勢を伝えるニュースを追っていると,
次のような情報を頻繁に目にするでしょう。
- ウクライナ軍よりもロシア軍の方が
兵士の損失数が多い。 - ウクライナ軍が高台を確保したので,
今後の戦いが有利になると期待される。 - ウクライナ軍が長距離ミサイルで
ロシア軍の弾薬庫を破壊している。 - ウクライナに対する強力な武器の供与が
発表された。 - ロシア軍の武器弾薬がいよいよ枯渇してきた。
これらは,ウクライナ軍が有利に
戦っていることを伝える情報です。
専門家なら,こういった情報の収集や真偽判定,
今後に与える影響の予測などを行う必要もあります。
しかし,筆者を含めた素人は,
この種の情報は全部聞き流した方が良いと思います。
これらの動きが領土奪還に繋がるかどうかは,
多分素人には分かりませんから。
下手をすると,
これらのような朗報っぽい情報を
毎日のように聞いているにもかかわらず
領土奪還が進まないことに,
苛立ったりしてしまいます。
ロシア軍兵士の排除も,
高台の確保も,後方拠点への攻撃も,
領土奪還のために行っていることですが,
いつどの程度領土奪還に繋がるかは
知りようがありません。
この種の情報に一喜一憂していても
あまり良いことはない…というのが,
筆者が経験で得た教訓です。
今回の反転攻勢の目的は領土奪還のはずですから,
この際,領土を奪還したという情報以外は聞き流す
というスタンスでもよいと思います。
朗報っぽい情報に期待するくらいは構いませんが,
それがなかなか領土奪還に繋がらなくても,
落胆しないようにしたいものです。
領土奪還の情報も,小規模なものは素通りで
2023年 7 月現在,
ロシア軍が占領しているウクライナの領土は,
10万平方km以上に上ります。
その一方で,ウクライナ軍から
伝わってくる領土奪還情報は,
数平方km~数十平方km程度の,
小さいものが多いです。🛎️
ウクライナ軍が公式に
これくらいの戦果を発表するのを見ると,
ちょっと苦しいアピールだな,
と思わないでもないです。
面積が小さいから重要でないとは限りません。
奪還した土地の位置や地形によっては,
今後の戦いを大きく左右する可能性もあります。
しかしそれは,おそらく専門家でも
意見が分かれるようなものです。
素人がその情報をもとに
今度の展開を予想しても,
そうそう当たるものではありません。
我々素人が注目するのは,
数百平方km以上の大規模な領土奪還の報だけで
十分だと思います。
小規模な領土奪還が,
専門家の目から見て重要であろうと,
最終的に大規模な領土奪還に繋がらなければ,
反転攻勢の目的は果たされないのですから。
我々素人は難しい先読みをする必要はありませんので,
戦争の大局を左右しそうな分かりやすい情報以外は
素通りでよいと思います。
反転攻勢の成否は,今年の秋には大体分かる
秋の泥濘期が始まったら,
オフロードを戦車が進みにくくなり,
戦線は長期間の膠着を強いられると言われています。
期限が比較的はっきりしているので,
その時期までにウクライナ軍が
かなりの領土を奪還できていれば反転攻勢は成功,
できていなければ失敗という評価でよいでしょう。🛎️
この記事の後半では,
もう1つ視点を加えて,
今年の分の反転攻勢の結末パターンを
類型化します。
つまり,反転攻勢がどの程度上手くいったのかは,
慌てなくても今年の秋頃には
素人にも大体分かるはずです。
現時点で領土奪還が進んでいないことは,
作戦がうまくいっていないことを意味しない
冒頭で述べた通り,ウクライナ軍の領土奪還は
あまり進んでいません。
ただ,ウクライナ軍の作戦がうまくいっていないと
判断するのは少し早いでしょう。
ロシア軍がどの程度無理をして
陣地を防衛しているかが不明だからです。
ロシア軍は,後方陣地の兵士を前線に出して
陣地を防衛しているという情報があります。
本来後方にいるべき兵士を前に出しているなら,
ウクライナ側の思惑通りと言ってよいでしょう。
逆に,ロシア軍が余裕を持って
部隊を入れ替えているのなら,
ウクライナ軍はこのままではまずいです。
やはり,筆者のような素人には,
このような微妙な情報からは
どちらとも言えないという印象です。
ポジティブに考えるなら,
まだ悲観する必要はないとも言えます。🛎️
2023年 7 月下旬時点で。
ロシア軍の内情がどの程度厳しいかについては,
専門家の間でも意見が分かれているのですから,
筆者のような素人が調べて考えても,
得られるものは少ないでしょう。
この点については可能性を幅広く残したまま
考察するのが妥当な姿勢かと思います。
秋までにかなりの領土を奪還する必要はある
ロシア軍に泥濘期まで耐え切られたらダメ
前述の通り,ウクライナ軍は,
現時点(2023年 7 月下旬)で領土奪還が進んでいないことを
悲観するにはまだ早いと思います。
しかし,いつまでもそう言ってはいられません。
ウクライナ軍は,
このまま攻勢を続けるのであれば,🛎️
このような書き方をするのは,
今年は攻勢を途中でやめて
来年に持ち越す手もあると思うからです。
詳しくは後述。
秋の泥濘期が始まるまでに
かなりの面積の領土を奪還する必要があるからです。
前述の通り,秋の泥濘期が始まると,
戦線は長期間の膠着を強いられると言われています。
だとすると,秋の泥濘期の時点で
ほとんど戦線が動いていなかった場合,
戦線の後方地域で
どれだけロシア軍が損耗していたとしても,
あまり意味はないでしょう。
戦線が膠着している間に,
ロシア軍も補充再編等で立て直すことができますから。
そうなったら,ウクライナ軍の反転攻勢は,
少なくとも今年の分については
失敗と言わざるをえません。
泥濘期の直前期に全てを懸けている可能性も
ウクライナ軍は,訓練不足を指摘されています。
NATO 型の諸兵科連合作戦の習得を
目指した部隊も多いですが,
そもそも訓練期間があまりに足りないとの
指摘もあります。
ウクライナ軍も,自軍兵士の訓練不足は
自覚しているでしょう。
それでもなお,ウクライナ軍が今年中の
大規模な領土奪還を諦めないとしたら,
どのような作戦を立てるでしょうか。
まず,作戦の大前提として,
できる限り長い期間,
自軍兵士を訓練してから戦わせたいと
考えるでしょう。
その上で,秋の泥濘期をタイムリミットと考えるなら,
- 後方に控えさせている機甲部隊を,
ぎりぎりの時期まで訓練させる。🛎️ NATO のような戦い方を
目指すかはともかく。 - 前線では引き続き,
ロシア軍戦力の削減に努める。 - 後方部隊の訓練が終了したら,
泥濘期の少し前の時期に一気に攻める。
これが最も,ウクライナ軍が考えていそうな作戦だと
思うようになりました。🛎️
あくまで,ウクライナ軍が今年のうちに
後方部隊を本格的に投入するつもりなら,
という話です。
現在のウクライナ軍は,
後方に多くの予備部隊を待機させたまま,
前線では領土奪還よりも
ロシア軍戦力の削減を重視して
戦っているとの見方が大勢です。
それを聞くとなおのこと,
上記の推測がしっくり来る気がするのです。
その場合,訓練の終了時期を設定し,
それに合わせて訓練メニューとスケジュールを
決めるでしょう。
であるなら,訓練の終了時期までは
戦場でどれだけ有利になろうと攻めないというのが
基本方針になるのではないでしょうか。
例えばの話,ウクライナ軍が,
8月末までは後方の機甲部隊を訓練して
9月に攻めると決めていても,
全然おかしくはないと思うのです。🛎️
多少の例外はあるとしても。
泥濘期が始まる時期は正確には分かりません。
また,攻め始める時期が遅すぎると,
ロシア軍が「泥濘期まで逃げ切れば」と,
ラストスパートをかけやすくなります。
そう考えると,9月後半になっても
ウクライナ軍が大規模に攻めないようなら,
潔く越年という方針なのだろうと思っています。🛎️
ウクライナ軍が,
泥濘期の影響を大きく緩和できるような
奥の手を持っていれば,
全然違う話になってきますが…
さすがに可能性は低いでしょうね。
もっとも,後述するように,
筆者は反転攻勢を越年させてもよいと
思っている方ですので,
必ずしも上記の作戦・方針を
支持するわけではありません。
今年はこの辺で攻撃を中断する手もある
西側の武器支援は戦力の逐次投入そのもの
筆者は軍事に詳しくありませんが,
戦力の逐次投入は愚策とされているそうです。
つまり,戦力を少しずつ投入しても
多くの場合戦果には繋がらないので,
戦力を投入する時は集中的に投入せよと。
そして,必要最低限の水準を狙って小出しにする
西側諸国の武器支援は,
戦力の逐次投入そのものだと批判されています。
ウクライナ側の自業自得の面もあるかも
西側諸国のウクライナに対する
武器支援が遅れているのは,
ウクライナの汚職に対する対策が
一因になっている可能性があります。
もしそうなら,ウクライナとしては
自業自得の面もあると言わざるをえません。
詳しくは次の記事にて。
ウクライナ側で調節する方法はある
西側支援が逐次投入的でも,
ウクライナ側で負の影響を緩和する方法はあります。
武器弾薬が溜まるまでは攻撃を控えることです。
そうすれば,武器弾薬の逐次投入を避け,
集中投入を実現できます。
特に,今回の反転攻勢については,
西側諸国からの戦闘機供与が
まだ実行されていないことが
領土奪還の遅れに繋がっているという説が有力です。🛎️
反論もありますが,
有力な説であるのは確かです。
ならば,今年はこれ以上攻めず,
戦闘機が来るまで待つという手は
大いにあると思います。
その方針だと,反転攻勢は来年に持ち越しになりますが,
それも仕方ないでしょう。
これくらいの抗戦ができる事が判明したロシア軍に対して,
航空優勢なしで今年のうちに決着をつけるのは,
高望み と判断せざるをえませんから。
どうせ来年以降までかかるなら,
今年はこのあたりでやめておくという手も
あると思うのです。
全く攻めないと,西側諸国が焦れる
「また来年改めて」という方針をとるなら,
今年は最初から攻めない方が良かったのではないかと
考える方もいらっしゃるかもしれませんが,
それは違うと思います。
前述した通り,攻勢を始めた後のロシア軍が
しっかり抗戦してくるのか,
あっという間に瓦解するのか,
その予想は非常に難しいものでした。
つまり,ウクライナ側が勢いよく攻めれば,
ロシア軍があっさり崩壊する
可能性があると考える人は,
西側諸国にも多かったはずです。
その状況下で,ウクライナ軍が
今年は攻めない,
来年になったら戦闘機供与や
パイロット訓練が十全になるので
それを待つ
との決断をした場合,
国際社会はどう反応するでしょうか。
間違いなく,西側諸国は焦れていたでしょう。
戦闘機なしでも,勢いよく攻めれば
ロシア軍は簡単に瓦解する可能性が十分ある,
早く攻めて決着をつけてほしい
という声が強まることは,想像に難くありません。
反転攻勢を試みたからこそ,
理解は得られやすくなっている
しかし今,ウクライナ軍は実際に反転攻勢を試み,
ロシア軍が早期に瓦解する可能性は消えました。
そのことを,西側諸国もよく理解したでしょう。
それによって,ウクライナ軍は,
来年まで待つ選択肢を得たと考えるのが
妥当だと思います。
今回の反転攻勢を仕掛ける前に比べれば,
戦闘機が来るまで待つ方針に対して,
西側諸国からの理解が
格段に得られやすくなっているからです。
ロシア軍が攻めてくるなら,防御に回ってもよい
ロシア側の軍による昨年冬から春にかけての攻勢や,
現在進行中のウクライナ軍による反転攻勢を見ていると,
やはり防御側が圧倒的に有利なのは
間違いなさそうです。
7月後半に入って,ロシア軍が
ウクライナ北東部のクピャンスク方面などで
攻勢の兆しを見せています。
心配する声が多いようですが,
筆者は,ウクライナ軍にとって
チャンスかもしれないと思っています。
防御側が圧倒的に有利なのですから,
ロシア軍が攻めてきてくれるなら,
ウクライナ軍は慌てず防御に回ったらよい
のではないでしょうか。
ウクライナ軍の勝ちパターン
この方面のロシア軍が
どのように攻めてくるのかは分かりませんが,
仮に,ロシア側軍勢による
バフムート攻略戦の時のような,
万歳突撃中心の戦い方なら,
ウクライナ軍から見て,相当有利な損耗比率を
実現できるはずです。🛎️
それができないとすれば,
万歳突撃が問題なく有効ということになりますが,
まさかそんなことはないでしょう?
もともと防御側が有利な上に,
人命軽視の戦法で攻めてきてくれるのですから。
ロシア軍が無理攻めをしてきて,
ウクライナ軍にとって非常に有利な損耗比率の
消耗戦が長く続けば,
ウクライナ軍の残存兵力がロシア軍より
圧倒的に多い状態を実現できる可能性が高まります。
ウクライナ軍としては,上記の方針で,
残存兵力の比較でロシア軍を圧倒できる状況を
作らないことには勝ちが見えません。
ですから,その状況が実現するまではウクライナ軍は攻めず,
ロシア軍が何度も攻めてくるのを
有利な損耗比率で撃退し続けるという作戦が
考えられるわけです。🛎️
ロシア軍が攻めてきてくれないと
成立しない作戦なので,
必勝法にはなりえませんが。
その際に,縦深防御で少しずつ後退することにより,
戦術的にさほど重要でない土地を
多少取られるくらいは
許容範囲だと思います。
そして,残存兵力で圧倒的優勢になったと確信できたら,
乾坤一擲の反転攻勢で一気に勝負をつける。
おそらく,ウクライナ軍は,
先のバフムート攻防戦でもこの勝ちパターンを
意識していたのではないでしょうか。
だから,バフムートでロシア側が攻撃してきていた頃は
ロシア軍兵士の削減に努め,
攻撃してこなくなったところで
反転攻勢を始めたという流れかと
想像しています。
現状ではロシア軍の残存兵力もまだ多く,
不十分だったわけですが,
ここでロシア軍が攻めれば,
上記の勝ちパターンが実現可能になるチャンスを
ウクライナ軍に与えかねません。
なので,筆者は,
ロシア軍が本格的に攻めてくるなら
それはおそらく悪手であり,
ウクライナ軍にとっては好都合だと思っています。🛎️
バフムートの時とは見違えるような
戦い方を披露してくるなら
多少話が違ってきますが,
意見自体は大きく変わりません。
防衛のために予備戦力を投入してもよい
ウクライナ北東部にあるクピャンスクは,
バフムートとは違って,
軍事的に重要だと聞いています。
ここを取られるくらいなら,
南部戦線用の予備戦力を投入してでも
守った方が良い気がします。
ウクライナ軍の戦況分析次第ではありますが,
既に来年以降の戦いを見据えているなら,
今年の作戦目標を領土奪還から
ロシア軍戦力の削減に切り替えてもよいはずです。🛎️
そもそも,北東部の防衛に
予備戦力全部が必要というわけでも
ないでしょうし。
ロシア軍と言えども,
兵士は無尽蔵ではありません。
一度壊滅させれば,
回復には年単位の時間がかかるはずです。
そうなれば,ウクライナ軍が決着を
来年以降に持ち越すことになっても,
来年以降の反転攻勢に有利に働くでしょう。
また,プーチンが兵士の損失を補うために
追加動員をかければ,
民衆が不満を爆発させる可能性が高まります。🛎️
これ1つでは爆発しなくとも,
爆発に向けて大きな前進になります。
プーチンとしては,
さらなる無理がしにくくなることは
間違いありません。
それに乗じて軍部や反政府組織が
動き出すこともありうるでしょう。
このように,ウクライナ軍が
今年中の決着にこだわらなければ,
現在の作戦とは異なる勝ち方も見えてきます。
ウクライナ軍は,方針をはっきり決める必要がある
2023年 7 月下旬の時点で,
ウクライナ軍は中途半端にも見える攻勢を
続けています。
これが,勝算あっての作戦通りであればよいのですが,
今年中に十分な戦果をあげるのは難しそうだが,
反転攻勢を来年に持ち越すにしても,
国民にどう説明すればよいのか分からない。
来年まで兵士や国民の士気を
維持できないおそれもある。
一縷の望みにかけて攻撃を続けるしかない。
といった理由で,やめるにやめられず
攻撃を続けているのだとすれば,
かなりまずい状況です。
内情は分からないので,
それほど強く疑っているわけではありませんが,
外から見ている分にはそのようにも見えるので,
少し心配しています。
勝算があるので攻める,無理せずやめる,
当面は攻めるがある条件を満たしたらやめるなどと,
軍事的合理性に基づいて
方針をはっきり決められていればよいのですが。
暗く寒い冬に備える必要はある
もし,ウクライナ軍が,
今年中に広範囲の領土を奪還し,
ウクライナ側が納得できる内容で
停戦できると確信しているなら,
そのまま作戦を進めてもよいでしょう。
しかし実際には,
今年だけでは無理っぽいと思い始めている可能性が
高いと思います。
その場合,心配になるのは,
次の冬をウクライナ国民が越えられるかどうかです。
ウクライナ国民は,昨年から今年にかけて,
ロシア側による電力施設へのミサイル攻撃で,
暗く寒い冬を強いられました。
ウクライナ国民は,暗く寒い冬を,
暖冬にも助けられて1度は乗り越えましたが,
2度目も乗り越えられるかは分かりません。
前回乗り越えられたのは,
今年の反転攻勢に期待したから
気力が続いたという面もあるでしょう。
前回の冬の時点では,
ウクライナ軍が大規模反撃の態勢を整えて
勢いよく攻めれば,
ロシア軍が比較的簡単に瓦解して
戦争終結が見えてくる可能性もある
と期待していたウクライナ国民は
かなり多かったはずですから。🛎️
昨年のハルキウ電撃奪還やヘルソン奪還が
記憶に新しかったことも,
その期待を後押ししたと思われます。
希望的観測であることは自覚しつつも,
その希望を心の拠り所にしていたことは
間違いないと思っています。
しかし,実際に攻めてみてその可能性が否定された今,
来年以降の反転攻勢にも過度な期待はできないと
認識した人が多いでしょう。
大きな心の拠り所を1つ失ったウクライナ国民が,
前回と同じ厳しさの冬を今回も乗り越えられるかは,
疑問視せざるをえないところです。
ロシアは当然,そこを突いて,
ウクライナ国民の心を折るべく
同様の攻撃を仕掛けてきます。
ウクライナ側としては,
国民の気力が前回の冬よりも
維持されにくいことを考えると,
今回の冬は前回よりも
厳しさを和らげる必要があります。
ウクライナ政府は,次の冬を見据えて,
防空システムの追加供与を西側諸国に要請する,
電力施設修復用の資材を各国から集めるなど,
早めに対策を始めるのが吉だと思います。
ウクライナ国民の気力と希望が維持できるか
実際の影響の度合いはともかく,
今年はまだ戦闘機が供与されていないという
分かりやすい弱みがありました。
そのため,来年になって戦闘機が供与されれば,
今年よりは有利になるかもしれないと,
ウクライナ政府は国民に言えますし,
国民もそう思えるかもしれません。
しかし,来年,戦闘機が供与されてもなお
領土奪還が進まなかった場合,
その次の冬を越すのは
精神的に厳しくなってくる気がします。
今後の注目ポイント
ウクライナ軍側の旧ソ連製戦車の行方に注目
ウクライナ軍がこのまま攻撃を続けるという前提で,
筆者が今後しばらく注目するポイントは,ずばり,
ウクライナ軍が,
南部戦線の後方に控えているはずの
多数の旧ソ連製戦車を,
どのような戦況で出してくるか
です。
先に軽く結論を述べると,
ウクライナ軍が旧ソ連製戦車を,
- ロシア軍の防衛線を
ある程度突破してから出すならOK - ロシア軍の防衛線を
ほとんど突破できていない状態で出すなら危うい
と考えています。
ウクライナ軍が旧ソ連製戦車を
多数投入したかどうかは,
ロシア側情報源から出る戦車撃破情報などで
ある程度分かるでしょう。
2023年 7 月中旬時点では,
まだそれほど多くの数は投入していないと
認識しています。
序盤戦は,ウクライナ軍は西側戦車を主に使った
ウクライナ軍は,反転攻勢開始当初,
旧ソ連製戦車ではなく,
西側から供与された戦車を先に投入したと
言われています。
その理由は,西側戦車の方が旧ソ連製戦車に比べて,
乗員の生命保持能力が圧倒的に高いからと
考える専門家が多いようです。
敵の激しい反撃に晒されることが確実な序盤戦では,
防御力の高い西側戦車を出して,
撃破されても乗員の命を保持する作戦ですね。
乗員が無傷または軽傷で帰還できれば,
別の戦車に乗せることができますから。
筆者はこの説明を聞いて
なるほどと思いました。
おそらく,ウクライナ軍は,
ロシア軍の防衛線を突破できた後に
旧ソ連製戦車を出す作戦なのでしょう。
防衛線を突破した後,
ロシア側の守りの弱い土地を進軍する用途であれば,
防御力の低い旧ソ連製戦車でも
比較的リスクは低いという考えなのだと思います。
ロシア軍の防衛線を突破できていない状態で
旧ソ連製戦車を出す展開になったら危険信号
現状認識が上記の通りで大体正しいとすると,
この戦争を見守っている我々にとって,
ウクライナ軍がどのような戦況で
旧ソ連製戦車を出してくるかは,
重要な注目ポイントになると考えています。
仮に,ウクライナ軍が,
ロシア軍の防衛線を突破できていない状態で
旧ソ連製戦車を突っ込ませる展開になったら,
危険信号だと思っています。
もちろん,その時点で戦線は動いていなくとも,
ロシア軍の防御が十分に弱っていればいいのですが,
見ている方としては心配になる展開です。
そして,旧ソ連製戦車を多数出しながら,
しばらく攻めてもウクライナ軍が
戦線を大きく押し上げられないようなら,
完全にウクライナ軍の苦戦と判断できます。
旧ソ連製戦車を多数出し,
かつロシア軍の強い抵抗を受けているなら,
ウクライナ側の兵士の損失も多いはずですから。
その場合,来年以降の反転攻勢にも
深刻な影響が出かねません。
下手をすると,戦争自体が
ウクライナの敗北に近づく可能性すらあります。
そんな展開になるくらいなら,
潔く反転攻勢を来年に持ち越した方が良いと
思っているのですが,どうなるでしょうか。
無理をする価値があるとすれば
ロシア軍の抵抗が激しい戦場で
旧ソ連製戦車は出さない方が良いと述べましたが,
アゾフ海への打通が見えてきた場合は
無理をする価値があるかもしれません。
南部ザポリージャ戦線における
アゾフ海への打通には,
次の2つの利点があると考えています。
- マリウポリ・メリトポリ間の
ロシア軍の補給線を断てる。 - アゾフ海沿岸から水上ドローンを放てる。
この水上ドローンが
結構大きいのではないかと思ってまして。
現状では,クリミア大橋を
水上ドローンで狙うとしたら,
オデッサのようなかなり遠い場所で
ドローンを放つ必要があるはずです。
これがアゾフ海沿岸となると,
クリミア大橋までの距離は
格段に縮まります。
素人考えゆえ確信はないですが,
上記2点のメリットが大きいのであれば,
アゾフ海沿岸まで
もう一息というところまで迫った場合,
多少の犠牲を承知で旧ソ連製の主力戦車を
突っ込ませる手はあるかもしれません。
もっとも,それはやはり最後の手段であり,
他の手段でもアゾフ海に到達できるなら,
他の手段を先に検討したいところです。
想定される結末パターンは,大きく分けて3通り
よく言われている通り,今回の反転攻勢において,
最も重要な地域は南部ザポリージャ戦線でしょう。
反転攻勢のこの地域における結果は,
前述した旧ソ連製戦車の行方を加味すると,
次の3通りに大別されるかと考えています。
反転攻勢(今年分)の結末パターン
- ウクライナ軍が領土奪還を進め,
夏のうちにアゾフ海に到達した。
⇒ 今年の反転攻勢は成功,
来年以降にも期待できる。 - ウクライナ軍が旧ソ連製戦車をほとんど投入せず,
夏のうちに南部ザポリージャ戦線が
あまり動かなかった。
⇒ 今年の反転攻勢はどちらかと言えば失敗だが,
来年以降に望みが残る。 - ウクライナ軍が旧ソ連製戦車を多数投入したが,
南部ザポリージャのロシア軍防衛線を
ほとんど突破できなかった。
⇒ 今年の反転攻勢は大失敗,
来年以降にも深刻なダメージが残る。
今年の秋には,これらのうちどの結末を迎えたか,
筆者のような素人にもかなりの程度分かると思っています。
もちろん,上記の類型は「大別するなら」ということであり,
中途半端な結果もありえます。
- 奪還領土だけを見れば(1)だが,
ウクライナ軍の戦車損耗が激しく,
来年以降に悪影響が残る。 - 旧ソ連製戦車を本格投入して
ロシア軍防衛線の突破を試みたが,
勝算が低いようなので途中で打ち切り,
(2)と(3)の間くらいの結果になった。 - 領土奪還はある程度進んだが,
アゾフ海までは届かなかった。
という感じで。
ただ,(1)~(3)の類型を意識しておくと,
反転攻勢の結果判定がしやすいですし,
途中経過も見守りやすくなるのではないかと
考えています。
来年以降に持ち越される場合の展望
備蓄量の勝負から,生産速度の勝負に移行していく
ウクライナ戦争に限らないことかもしれませんが,
昨年2月の開戦からしばらくは,
お互いに武器弾薬の備蓄を取り崩しながらの
戦いだったはずです。
今後,戦争が長期化するにつれて,
当初持っていた在庫は消費し尽くし,
お互いに自国および支援国が生産するペースでしか
武器弾薬を消費できない状況になってきます。
つまり,開戦からしばらくは
武器弾薬の備蓄量が多い方が有利でしたが,
時間が経つにつれて,
武器弾薬の生産ペースが速い方が有利になっていくと
考えられます。🛎️
今回のウクライナ戦争の場合は,
もちろん西側諸国の分を
ウクライナ側に加えます。
両軍の砲弾の枯渇について
だいぶ前から,両軍について,
砲弾の枯渇が報じられるようになりました。
どちらの軍でも,
1日に何千発の砲弾が必要なのに
実際にはこれだけしか送られてこない,
砲弾を早く送ってくれ,のような声が
前線から届くと聞いています。
もちろん,前線の兵士は必死なので
そう言いたくなるのは理解できますし,
砲弾の調達に全力を尽くす必要はあります。
ただ,両軍ともに砲弾が枯渇しつつあるなら,
お互いに発射数が減ってくるはずです。
自軍だけ発射数が減るならまずいですが,
お互いに減るなら,
自軍が不利とは限らないでしょう。
なら,以前のペースで撃てないことを
嘆いても仕方がありません。
以前のペースでは撃てないなりの戦い方を
考えた方が得策です。
戦場の条件変化に,より早く対応できた軍が,
今後の戦闘で有利に立てるのではないかと
思ったりもします。
もちろん,命の懸かった戦場で,
このような冷静な思考を求めるのは
酷かもしれません。
上記のようなことは承知の上で,
供給される砲弾の数を減らされたくないという
気持ちも分かります。
ただ,外で見ている我々は,
戦場にいる兵士より冷静でいられるのですから,
冷静に情勢判断をしていきたいと思うのです。
ロシア軍側の枯渇の報に希望を見出したり,
ウクライナ軍側の枯渇の報に焦ったりするのは,
いずれも妥当ではありません。
お互いに砲弾が少なくなりつつある戦場で
両軍の戦闘がどのように
変化していくのかという視点で
見守るのがよいかと思います。
生産速度の勝負なら,ウクライナが有利になってくる?
西側諸国は,これまでの平和ボケが祟り,
武器弾薬の生産ラインを
相当減らしていたと聞いていますが,
徐々に生産ラインを増やしてきているはずです。
西側の各国は,激減してしまった武器弾薬の備蓄を,
ウクライナ戦争の前以上の水準まで
高めようとするでしょう。🛎️
戦前の備蓄量でも足りてなかったと
認識したはずですから。
たとえ戦争がすぐに終わっても,
今後数年は作れば売れる特需環境が続くはずです。🛎️
実際には当分終わりそうにないので
なおのこと。
利益追求の精神で構いませんので,
軍需関連の生産技術を持つ各企業には
ぜひ頑張っていただきたいです。
西側の生産ラインが揃ってきさえすれば,
ロシア1国の生産速度は上回れるでしょう。🛎️
ロシアは大々的な輸入は
困難という前提です。
それができないなら,資本主義国は
戦争に弱いということになってしまいます。
トップが作れと言ったら作る社会主義国に
対抗するのは大変ですが,🛎️
実際,現時点ではロシアの方が先に
ドローンや砲弾の増産に
成功しつつあるようです。
そこは何とかしてほしいところです。
これまでウクライナ軍は
ロシアの圧倒的な備蓄量に苦しめられてきましたが,
生産速度の勝負なら,
西側諸国の分を加算できるウクライナの方が
今後徐々に有利になってくるのではないかと
期待しています。🛎️
お互いに生産ラインが整ってきた後は,
資源調達の勝負になっていく
可能性もありますが…
しかも,これまでの両軍の戦いぶりから,
武器弾薬の量が同等なら
ウクライナ軍の方が強そうというのが
大方の見方のようです。
ということもあるので,ウクライナ軍は無理をせず
来年以降に期待するという手も
大いにあると思うのです。
ウクライナ軍が苦戦するなら
支援が減るなんてとんでもない
よく,ウクライナ軍が反転攻勢で
多くの領土を奪還できないと,
西側の支援が減るかもしれないと言われますが,
本当はとんでもない話です。
この戦争でウクライナが負けたら,
侵略戦争を認める世界に逆戻りです。
その重大さを理解していないわけではないでしょう。
現在の支援ではウクライナ軍が勝てないと言うなら,
勝てるように支援してもらいたいものです。🛎️
もちろん,日本も含めて。
特にアメリカとイギリスは,ブダペスト覚書で
ウクライナの安全保障を約束していながら,
派兵もせず武器支援にとどまっているのですから。
支援国側の経済はどうするんだ,と思われた方へ
当ブログでは,経済以外の分野に関する記事において,
経済への影響の心配はしないことにしています。
筆者は,日本経済や世界経済が
ここまでおかしくなってしまったことには原因があり,
その原因を解消すれば,経済をかなりの程度
正常化できると考えているからです。
その原因については,
姉妹サイト<世界経済蘇生秘鑰>で
詳細に説明していますので,
興味のある方はぜひご覧ください。
- お急ぎの方は,
PDF文書の「簡略版」 がおすすめです。🛎️ 短い文書ではありませんが,難易度は低いです。
標準的な高校生くらいの知識と理解力でも
すんなり通読できると思います。
まとめ
改めて,この記事の主張を以下に示します。
この記事で主張したこと
- ウクライナ軍は,
反転攻勢を始めてから1週間ほどで,
領土奪還重視の戦い方から持久戦に
切り替えたと思われる。🛎️ 反転攻勢の開始日は,
2023年 6 月 6 日頃と認識しています。 - (筆者も含めて)素人目線では,
ウクライナの領土奪還が進むかどうかに
注目していればよい。🛎️ 大規模な領土奪還以外の情報は,
大規模な領土奪還に繋がらなければ
無意味くらいの感覚で。 - 現時点(7月下旬)で領土奪還が進んでいないから
反転攻勢失敗と判断するのはまだ早い。🛎️ ロシア軍が陣地を防衛するのに
どの程度無理をしているかが不明なので。 - ウクライナ軍がこのまま攻撃を続けるなら,
秋の泥濘期が始まる前に
かなりの面積の領土を奪還する必要はある。🛎️ あくまで,攻撃を続けるならの話です。
今年は領土奪還のための攻撃を
やめるという選択肢もあります。
- ウクライナ軍が本格的に攻めてみた結果,
ロシア軍が頑強に抵抗できることが
初めて分かった。
このことを意識すると,より推察が深まるはず。🛎️ 世間ではこの点が
軽視されている気がします。 - ウクライナ側は,今年はこれ以上反転攻勢を
続けないという選択肢もある。🛎️ 来年になれば西側からの戦闘機供与が進み,
今年より有利に戦えると思われるので。 🛎️ ウクライナ軍が一度本格的に攻めてみて,
ロシア軍が簡単に瓦解しなかったことで,
西側諸国の理解は得られやすくなっているはずです。
- 今後しばらくは,
ウクライナ軍側の旧ソ連製戦車が
どのような戦況で本格投入されるかに
注目したい。🛎️ 現在それらは後方に控え,
乗員の生命保持能力が圧倒的に高い西側戦車を
先に出していると聞いています。 - ウクライナ軍が南部ザポリージャの戦線に
旧ソ連製戦車を多数投入して攻撃を続けても
戦線が動かないようなら,
ウクライナ軍にとってかなりまずい状況。
そうなるくらいなら,潔く越年でよいと思う。
超長文にお付き合いいただいた
読者様に感謝を。
そして,読者様の思考の助けになる部分が
少しでもあれば幸いです。